ひでごんの独り言&小説みたいなもの -6ページ目

ひでごんの独り言&小説みたいなもの

何か気ままに
書いていこうと思います。

 里香子は、受話器を受け取ると不敵な笑みを浮かべて、静かに話しだした。
話と言うより、罵り合いだろう。
 里香子をほっといて、俺は受付の窓口から中を覗いてみた。
田舎の診療所としては、かなり充実した備品が見える。
 周りを見渡してみると、設備が充実していることがわかった。見える範囲のドアの上には、診察室から始まり、レントゲン室、処置室、CTスキャン室まである。
 いったいどこからそんな金が、沸いてくるのか。こんな田舎に。
 俺は、注意深く辺りを見渡してみた。すると、受付の横に医者の名前を見つけることができた。
プレートには、『桐嶋 圭太』と、書かれていた。
 「?」
 見覚えのある名前だ。
 「・・・」
 すぐに判った。行方不明の国原あゆと一緒に写っていた男の名前だ。資料によれば、職業・医師。
同一人物か?。
 しまった、写真を持ってくるんだった。どこかに、写真はないだろうか。
すると、掲示板の一枚の紙に目が止まった。
 手作りのポスターには、『みんなで勝ち取ろう、若返り』と、書かれている。そして、そこには一枚の写真が張り付いていた。数人の初老の男女と一緒に照れくさそうに写っている男がいた。
 田辺刑事が持ってきた写真に写っていた、桐嶋であった。
 「ラッキー。」
 俺は、小さくつぶやいた。
 桐嶋ルートの、手がかりができた。資料は、彼の事に関しては乏しかった。
ここから、足がかりができそうだ。真面目に、山を超えて来て正解だった。
 後は、ここに案内してくれた老人から情報を聞き出すだけだ。
 俺は慌てて里香子から、受話器を取り上げた。
 ちょうどヒートアップしていた里香子が、凄い睨みをきかせてきた。
ゾッとするような、目付きだ。子供なら、ひきつけをおこすぞ。
 とりあえず無視して、受話器を耳に当てた。
 「いい加減、涼さんに憑きまとうのおやめなさい。でないと、この日本に住めなくするよ。」
 ドスのきいたレイの声が聞こえてきた。
こいつなら、やり兼ねない。
 「俺だ。」
 「あっ。涼。」
 「レイ。悪いんだけど、迎えに来るの明日でいい。」
 「なんか見つけたわね。」
 俺は、一呼吸おいた。そして、嫌味たっぷりに続けた。
 「レイの紹介の依頼人の仕事を、やってるんもので。色々大変なんですよ。貴方の関わる仕事は。」
 十中八九間違いない。レイが今回の依頼人、国原響子に俺を教えたのは。
彼女を以前見たことがあるのは、レイの家でだ。
 「涼さんが、くいっぱくれないように仕事を紹介したまでよ。」
 「心遣い、いたみいります。」
 内心は、面倒な仕事ばかり押し付けやがってだが。
当然、言葉にはできない。
 「まぁ、棚からぼた餅で、足がかりができそうなんだ。だから、明日の朝10時に頼むよ。」
 ちらっと里香子の様子をみると、あのポスターを見ている真っ最中だった。
流石だな。素直な感想だ。
 俺は2・3頼み事をして、電話を置いた。
するとそれを待っていたかのように、奥から足音が聞こえてきた。
 「連絡は、付いたかい。」
 先はどの老人が、水滴がびっしりと付いたコップを二つお盆に載せて現れた。
 「はい。ただ困ったことに、こっちに来れるのが明日になるみたいで。ここには、民宿なんてありますか?。」
 頭をポリポリやりながら、聞いてみた。当然こんな集落にそんな物あるわけがない。
俺としては、ここに泊まっるといいと言う返事を期待した。
 「そうかぁ。それなら、ここに泊まってくかね。幸い、部屋だけは、沢山あるから。」
 期待通りの返事が帰ってきた。
 すると里香子が、「すいません。有難うございます。」と、深々と頭を下げてみせた。
俺も慌てて、頭を下げた。
 森の中を、2時間程歩いた頃、一本の舗装されていない林道に出た。
さすがの里香子も、肩で息をしている。
 「どうするの?。ここを下る?。」
 里香子が、道を眺めながら言ってきた。俺は、出かけに頭に叩き込んできた地図を思い出した。
確かここを下れば、村がある。そこまで行けば、移動手段を手に入れることも可能だろう。
しかし俺は、違う選択をすることにした。
 里香子が、納得してくれるかどうかだが。
 「このまま、森を抜けて、山向こうに出よう。野宿確定だけどな。」
 俺は、タバコに火をつけながら里香子の様子を見た。
 「本気?。」
 俺は返事をしなかった。
 「帰ったら、埋め合わせしなさいよ。」
 「了解しました。」
 里香子は、俺の吸っていたタバコを奪いとって吸いだした。しばし道の向こうにやっている。
 俺は、コンパスで方向の確認をした。そして、見えている地形と頭の中の地図とを照合する。
 「下りたら、連中が居るかしら?。」
 連中とは、国原家の別荘にやってきた奴らのことだろう。
 「普通なら、途中で網を張ってるだろうな。山さえ越えれば、探索範囲が広がる。まず、でっくわすことは無いはずだ。」
 「『はず』なんだ。」
 嫌味っぽく、返してきた。
 俺はため息を一つついてみせる。
 「会ったら、殺り合うさ。」
 俺は手に持ったままの銃を軽く上げて、苦笑いを作った。
それを見た俺は、森へとわけいった。

 次の日太陽がすっかり頭上へとやってきた頃、やっと俺達は一つの寂れた村に到着した。
村と言っても、集落だ。限界集落というやつだ。
 集落の入口まで来て、軽い違和感を覚えた。それは、他所の集落と随分違っていたからだ。
どこか、活気を感じるのである。ここから見える範囲に、数人の人影が見える。
たぶん、老人だと言っておこう。
 たぶんと付けたのは、皆背筋が伸び、ハキハキと歩いている。畑では、力仕事を普通にこなしているように見える。
 こんな集落に、若者が居るはずも無い。
 里香子も、少し怪訝そうな顔をしている。
 「みんな元気ね。」
 素直な、感想だ。
 「あんたら、どうした?。」
 突然、後ろから声をかけられた。振り向くと、一人の老人が立っていた。
老人と言うのはひつれいか。60代ぐらいの、元気そうな男がたっている。
 「すいません。実は山で車が故障して、ウロウロしてたら、ここに辿り着いたしだいで。」
 俺は、頭をポリポリやりながら言った。まぁ、警戒されないようにして、電話と一時の休憩の場所を確保したい。
 しかし、携帯が圏外なのは不便だな。
 「それなら、家の電話を使って、だれか呼ぶといい。見ての通り、ここには年寄りしかいないから、車の事は全然解からんから。」
 俺達は頭を下げて、男の後に付いて行った。
 10分ほどで、ひときわ大きな家に着いた。途中、何人かの人と会ったが、皆元気の一言であった。
ますます違和感が、広がってきた。
 しかしながら、敵意などは全く感じられない。むしろ、友好的である。
久々に、他所から人が来たというような感じだ。
 ここは、成り行きに任せよう。
 「診療所?。」
 里香子が家の前に出された看板を見て、少し素っ頓狂な声を出した。
確かにこんな集落に、似つかわしくない看板である。
 「あぁ。俺の家は、診療所も兼ねてるんだよ。でも、先生は今、留守だけどな。」
 中に入ると、それなりに立派な受付が俺達を出迎えた。
 「ここの電話を、使いなさい。」
 男が、受付窓口の横に置かれた電話を指さしながら言った。
 俺は軽く会釈をして、受話器を手にした。
 「ささ、そっちのお嬢さんも、その辺で休みなさい。今、冷たい物を持ってくるから。」
 そう言うと、男は奥へと行ってしまった。
里香子は男の後ろ姿を見送っている。
一応、警戒しているのであろう。
 俺は何故か、警戒の必要な無いと感じていた。
 俺はある番号に、電話をかけた。
数度の呼び出しの後、相手が出た。
 「どちら様?。」
 女の声が、受話器から聞こえてきた。
 「俺。涼だけど。」
 「涼さん。随分お久しぶりじゃない。」
 女が嫌味たっぷりと言ってきた。
 電話の相手は、昔恋人だったこともある西条レイである。
 「ちょっとまさか、あのバカ女に電話してるんじゃないでしょうね。」
 里香子が、後ろから噛み付いてきた。実はこの二人、犬猿の仲である。
事あるごとに、喧嘩をしている。
 「ちょっと涼さん。まだバカ女と組んでるの?。」
 「ちょっと、涼。その電話よこしなさい。」
 里香子が受話器を取り上げようとするのを俺は阻止しながら、レイに要件を伝えるハメになった。
 俺は、村の位置を伝えて、迎えをお願いしてみた。
 「バカ女を、トランクでいいなら引き受けるわよ。」
 一応、引き受けてくれるようだ。後は、里香子に任せよう。
俺は里香子に、受話器を放り投げて渡した。