小説みたいなもの(短編)--祈り願われるだけの者--その9 | ひでごんの独り言&小説みたいなもの

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何か気ままに
書いていこうと思います。

 あれから、数日過ぎていた。
あの二人は、あれ以来姿を見せないでいる。目的が、この大木であるいじょうこのまま、こないということはないであろう。恵美は、そう考えていた。
 夜響は、相も変わらずベンチに腰を下ろして読書をしている。
色々聞いてはみたが、あまり教えてはくれないでいた。
 特に、姉のことは口が重かった。そして、喋る木の事もである。
あれ以来大木は、ただの大木であった。
 そして今日、恵美は気になっていた事をきりだした。
 「ねぇ、夜響。私が神様に祈りをした時に、どうして無駄なことをするなと言ったの?」
 夜響の手が、止まった。視線は、そのままである。
 「これも、教えてくれないの?。」
 「神に祈っても、何も起こらない。」
 恵美は、少し驚いていた。夜響が、間髪入れずに返事をしてきたからだ。
普段なら、少しおいてから返事をしてくる。でも今は、・・・。
 「一つ教えてやろう。願いをかなえて欲しかったら、悪魔にお願いした方がいい。」
 夜響は、幹の側に座り込んでいる恵美を振り向きながら言った。
 「神は、何もしてくれない。」
 恵美は、少し困惑した。人でないであろう夜響が言う言葉には、説得力があった。
しかし、夜響が神を否定する存在なのかもしれなかった。もしかしたら、神と敵対する関係であるかもしれないと、恵美が考えたのである。
 恵美の家系は、何代か前からクリスチャンの家系であった。
そして自分も、修道院に最近まで入っていた。
改めて夜響に、得体の知れなさを感じる恵美であった。
 「お前も、修道女のはしくれだろう。今までに、一度でも神は降りてきたか?。」
 夜響が、笑っていた。少し、バカにするかのように。
 恵美は、返す言葉がなかった。
恵美は、知っていた。母親が、子供の命を救ってくれと、教会で祈りを捧げていた。でも子供は、死んだ。
親を助けて欲しいと、小さな子供が祈り続けたときも、奇跡は起こらなかった。
 そんな話は、数え切れないほどある。
 そして姉の日記にも、書かれていた。
 ”神など、くだらない存在だ。ただただ、祈り願われるだけの存在だ”
 姉も、敬虔なクリスチャンであった。
 「夜響。・・・・」
 言葉を失った。目の前の男が、とてつもない存在の様な気がしたからであった。
どこかで、ラッパの音が鳴り響いてるような気がしている恵美であった。
 闇を統べる者。
 それは、神と正反対の存在を意味しているのでないのかと、恵美は愕然としていた。
 「恵美。お前に、神を見せてやるよ。」
 そう言って夜響が、立ち上がって恵美のもとへとやってきた。
恵美が、恐怖を感じた。
その感情を読んだのか、夜響が苦笑いをしてみせた。
 「心配するな。お前は、死なせない。」
 静かな、しかし力強い声であった。
その声と同時に、辺りが暗くなったような気が恵美にはしていた。温度も、あきらかに下がっている。
そして、恵美の傍らの大木が、ざわめきだした。
 風も無いのにである。
 「いつまで、黙ってる気だ。」
 それは、大木へと夜響が放った言葉であった。

 ソファーに座っているエリンの表情が恍惚へと、変化した。
 「メグ。始まったよ。あの木だよ。」
 メグは、相変わらず宙を見ている。
そして、返事も無い。
 「ねぇ、メグ。行こうよ。間違いないよ、この臭い、箱だよ。」
 「そうね。彼が居るんだから、間違いないわ。」
 メグが、エリンへと視線を向けた。エリンすら、見たことのないメグが、そこにはいた。
 「エリン。精々、いい働きをしてね。100年ぶりに見付けた、神の箱なんだから。」
 エリンは、コクリとうなずくと、足早に倉庫を出ていった。
早く行きたいというより、今のメグの前から去りたかったかの様であった。
 「夜響。今度こそもらうわよ。その、パンドラの箱。」
 メグも、エリンの後を追うようにこの場をあとにした。