「なぁ。誰の仕業で俺達、こんな所に入られちまったのかな。」
鬼頭はそう呟くと、俺の前3メートル程のところで立ち止まった。
「どうでもいいや、そんな事。」
俯き加減の鬼頭が、頭を掻きむしりながら呟いた。
「なぁ。俺、腹減って死にそうなんだよ。」
不気味な笑顔を作りながら、奴の顔が上がった。修羅場を何度も乗り越えてきた俺でも、ゾッとする表情だった。
人間は、こんな表情をすることが出来るのか。ふと、そんな考えが浮かんだ。
それほど、不気味な顔であった。
「なぁ。いいだろう。」
そう言うと奴は、俺めがけて飛んできた。とっさに左に避ける。
「ゴン!」と、鈍い音が俺の耳に届いた。鬼頭が後先考えずに、俺めがけて飛んできた結果の音だろう。
俺は、部屋の中央まで転がるように移動した。奴が追ってきてないのを気配で感じ、立ち上がりながら奴の方へと視線を移した。
頭をかかえながら、うずくまっていやがる。当たり前だ。あの勢いだ、死んでいてもおかしくない。
喧嘩なれした奴とは、とても思えない。狂ってやがる。
「いって-・・・」
鬼頭の呻き声が、聞こえてきた。そして、頭をおさえつつ、立ち上がってこちらを振り返った。その顔は、吹き出した血で染まっている。不気味な笑顔のままで。
とっさに俺は、ドアめがけて走り出した。何故か奴は、追ってこなかった。動けないのか?。そう思ったせつな、奴の声が、背中に届いた。
「そっちの部屋に、食い物無いぞ。俺の勝ちだ。」
俺はかまわずに、ドアをぬけた。その際に俺は、あの死骸に一瞬視線を移した。そして、全力でドアを閉めて鍵をした。そこに有った現実から逃げるために。