お好み焼きエレジー(哀歌)

丁度今から16年前ぐらい

私が59歳で現役バリバリの頃だから

遠い昔だ

 

矢鱈に広島に出張した頃があった

いつの間にかお好み焼きの味を覚えた

一番強烈だったのはもう廃業したそうだがラビット

 

よくしゃべる女将さんで亭主は奥の四畳半で

キャベツを黙々と切っている

薄く台を焼いた上にキャベツ半球を積み上げて

大きなこてでギューッと押し付ける

 

別に焼いておいたバラ肉と目玉焼きを挟んで

一気に裏返す

見ているうちに自分で裏返せるようになった

 

「この辺は貧乏な学生が多くてね

お腹を空かしているから何とかお腹いっぱい

食べさせようと思ってキャベツをいっぱい入れたの」

 

もう一軒は新幹線の線路の裏の滝田ゆうの絵みたいな路地に猫がおしっこをしている裏にあった

疲れ果てたようなおっさんが

面倒くさそうにうどん粉を捏ねる

きれいな円形にわざとしないで、いびつな台に

もやしとキャベツとそばを載せる

 

隣の鉄板の上でバラ肉と目玉焼きとそばを焼いておいて乗せる

これが実にうまい

この店ももう廃業したそうだ

 

新幹線の構内には勝ちゃんとか麗ちゃんとか

大量に姿の美しいお好み焼きを作る店があったが

私はラビットと金ちゃんに好んで行った

 

広島では広島焼と言わずお好み焼きと言うが

もうあんなダイナミックな、見すぼらしい

お好み焼きは食べられないだろう

あの頃が私の最良の日々だった

 

お好み焼き古き良き日を思い出す