今月からWOWOWを契約しているので、ずっと気になっていた吉田恵輔監督の「空白」をようやく観ました。

 

そうそう、

11日のアカデミー賞の様子を見ながら

「すばらしき世界」を見逃してしまったことを大後悔。

ただでさえ推しごとで色々とっ散らかって大変~。

 

 

ここからはネタバレが、がっつりあります。そして私の備忘歴で自分勝手な拙い読書感想文みたいなもんです。苦笑

 

重いテーマであるとは重々承知していましたが、もう、途中・・・見ているのが辛かったです。

私、吉田恵輔監督作品が好きなんですよね。「ヒメアノ~ル」、「さんかく」。

そして過去にあった本屋の万引き事故のことを思い出しますね。。。

あと、隣人訴訟も彷彿とさせます。

マスコミの報道の操作シーンも想定内からのリアルさが胸糞が悪くなりました。

あと、人を轢くシーンをそこまでしなくてもいいのでは、というぐらいに生々しく描写するので

人間として生まれた「人」がこんなにも呆気なくその命を・・・自分の意志とは反して終わらせてしまうことに憤りも感じながら

その悲惨な描写から生まれる後々の矛盾の数々にも色々考えさせられます。

 

<あらすじ>

全てのはじまりは、よくあるティーンの万引き未遂事件。スーパーの化粧品売り場で万引き現場を店主に見られ逃走した女子中学生、彼女は国道に出た途端、乗用車とトラックに轢かれ死亡してしまった。 女子中学生の父親は「娘が万引きをするわけがない」と信じ、疑念をエスカレートさせ、事故に関わった人々を追い詰める。一方、事故のきっかけを作ったスーパーの店主、車ではねた女性ドライバーは、父親の圧力にも増して、加熱するワイドショー報道によって、混乱と自己否定に追い込まれていく。 真相はどこにあるのかー?少女の母親、学校の担任や父親の職場も巻き込んで、この事件に関わる人々の疑念を増幅させ、事態は思いもよらない結末へと展開することにー。

 

亡くなる女子中学生・添田花音(伊東蒼)。

その父・添田充(古田新太)。

花音を追いかけたスーパー店長・青柳直人(松坂桃李)。

離婚して再婚した花音の母親役に田畑智子。

花音を轢いた女性(野村麻純)の母親役に片岡礼子。

花音の担任に趣里。

スーパー店員に寺島しのぶ。

充のそばで働く青年野木に藤原季節。

 

すごい役者陣です。誰もが遜色なしの存在感。

それに吉田監督作品は俳優の無駄遣いも一切しませんし、捨てシーンもありません。

 

まず、何故この映画がPG12なのかは始まってすぐに分かります。

私は事故の描写に思わず叫んでしまいまいした。

つい昨日まで一緒に目の前で食事をしていた娘はトラックの車輪に巻き込まれ亡くなった変わり果てた姿で父と対面するんです。

 

私は最初からイライラしてしまって・・・

追いかけた店長が悪いのか?違うでしょう・・・・

充が花音に会話もさせないほど日常的に威圧をしていたからじゃないの?

だから、花音は車の多い危険な道路で状況も把握できずに逃げ続け、飛び出し、車に轢かれた。

お父さんにばれたら・・・・と思うと死にそうな思いだったのだろう。いくら何でも心の余裕がなさすぎる。

もし充がそんな万年暴挙の塊の父親でなかったら。人の話にきちんと耳を傾ける父親であったならば。

きっと、こんな悲惨な事故はならなかったのでは。

そして、肝心の父親は何故それにとっとと気づかないのよ・・・・・気づいてるなら何故自分と向き合わない?

 

人間が

「たら」と「れば」を言わなくなると人の幸せ度は増すと言いますが、

そこには過去の己に愚かな自己判断がきっとあるからに違いないからでしょう?

 

娘との心の距離の「空白」を、娘の死によってはじめて知り

充はそれに憤り、周りに八つ当たりしているようにしか見えないんです。責任転嫁。

産めば親になるんじゃない、育てれば親になるんじゃないんだよね。

 

で、藤原季節演じる野木がとても熱くて心根の良い青年。

充に向かってまっすぐに「充さんが親だったら正直きついっす」と言う。とてもリアルすぎる。

充について行けないと言いつつ、充を見守る今時の青年像が重い劇中で唯一の救いです。

 

花音の母親。充とは離婚し、再婚して妊娠中。

あの暴君の父親に花音を残して

自分は新しい旦那と節約までして不妊治療して妊娠。

おまけにお腹の子に、花音の名前を一部、つけるという。

 

イライライライラ・・・・苦笑

花音は?あんたの子じゃないの?

妊娠中の母に心配かけまいとして、でも思春期だし母親を求めてて。

その反動ストレスで万引きしたんじゃないの?

寂しかったんじゃないの?

自分だけ暴君と別れて我が子を置いて新しい生活で幸せになる気なの?え?????

娘は?花音も10月10日あなたのお腹にいた、貴女の子じゃないの?

そりゃ、父親がまともな父親だったらそうでも構わないんでしょうけど違うでしょ。

あ~イライラする。苦笑

花音は学校では存在感がないと言われ特に親しい友達もおらず

遅い作業に対して担任からはイライラ感情を隠されもせず注意される。

やる気がないようにみえる、とか努力が感じられない、と周りに思われていても

人間の出来る容量は人それぞれで、それも個性だし

やる気がないように見えてもその子にとっては一所懸命でキャパもオーバーしそうなぐらいフル活動している場合もある。

それに花音の場合は父親がすぐ怒鳴る人だからビクビクして行動する癖がついてしまい

焦りが失敗につながる気がした。

 

この花音を演じる伊東蒼ちゃん。

いるいる、こんなオドオドした子!ってリアル感が絶妙なんです。。。。

で、ちょっと周りを苛立たせるオドオドした感じを出すのがとても上手。

佐藤二朗さんとの「さがす」でも話題になっていますが「湯を沸かすほどの熱い愛」の、鮎子ちゃん。

松坂桃李くんとはここでも共演してましたね。

 

先生も人間なんだろうけどやはりその子その子のペースってあるから

もう少し寛容になれなかったのかね。

悲惨な事故で亡くなったから、同情票で今さら気づいても後出しジャンケンである種、卑怯だ。

死なないとその子のことを理解できないの?それはあまりに残酷なのでは。

 

死んでから出来ることは、本人は勿論のこと遺された者にも、基本ないんだもの。

だから後悔のないように皆生き急いでいるわけでしょう。

 

最初花音を轢いたのは野村麻純。(役名わからず)

何度も母親(片岡礼子)と一緒に充に謝りに行くが、相手にされない。

 

青柳(店長)もスーパーで自殺をはかろうとするが、

自ら命を絶ってしまったのは車で轢いてしまった野村麻純のほうだった。。。。

泣きながら娘の亡骸に謝る母。

強い子に育てられなくてごめん、なのだろうか。そこまで思い詰めていたことに気づけなくてごめん、なのだろうか。

 

葬儀に現れた充は、その母に謝らないと言う。

その充に娘を亡くしたばかりの母は強く、

「こんな弱い子に育ててしまった私の責任です」「私が娘の罪を最後まで背負います」と言う。

もう・・・・ここは・・・・タオル無しでは見られないぐらい泣いてしまうシーンでした。

親より先に死んでいい子供なんてこの世にひとりもいない筈。

 

ここから充は少し変わる。

元妻への謝罪。

素直に、新しく生まれてくるお腹の子に対して「羨ましい」気持ちを涙を流しながら吐露する。

 

松坂桃李くん。

本当にどこをとっても素晴らしい俳優さんです。

薄っぺらく生きてる風味も、浅はかさも弱さもリアルに演じていて

パートのおばさんを演じる寺島しのぶに対して内心ウザいと思っている気持ちを隠しきれない演技も最高すぎる。

いや、これは寺島さんの素晴らしい演技ありき、なんですけれど。

青柳が弁当でキレるシーンは誰が見てもきっと、名場面。

謝って謝って謝ってマスコミに操作された報道をされ、精神はもう最後の糸が切れる寸前なのがよく分かる。

 

万引きをした客を見つけて、逃げられたから追いかけただけなのに・・・・はやはり否めないだろうし。

充の暴君行為を見て青柳も気づくはずだ。

「アンタがそんな父親だからあの子はあんな必死に逃げたんじゃないのか?」って。

「間接的にあの子を殺したのはアンタじゃないのか?」って。

青柳は最後まで救われたように私には、みえなかった。

充には追いかけまわされ、最後はスーパーを閉店してしまうのだから。

 

この映画は誰を被害者に加害者に、とか誰が正か悪なのか、ということは私は問題ではない気がしました。

もし自分が青柳の妻だったら、とか。青柳の親だったら、とか。

花音の母親だったら・・・・

野村麻純の母親だったら・・・・

という皆の立場の悲愴さが映画の内容に一気に凝縮されていて、それが錯綜して何がどうなのかもう分からなくなります。

 

桃李くん・・・・

「いのちの停車場」ではあんなに熱い青年を演じていたんですよ?(´;ω;`)

勿論

孤狼の血もですがあの対比どうですか。本当に素敵な役者さんになりましたよね。

そういえば桃李くんと趣里さんはマクガワントリロジーでも共演してましたよね。

マクガワン~の感情無機質状態でいっちゃってる桃李くんもメチャクチャ素敵でした。

 

寺島しのぶも最高でしたね。

青柳を心配している素振りをしながら「私、優しいでしょ。役に立つでしょ。」みたいな承認欲求の鼓舞が半端ない。

冷静に考えたら青柳に対するセクハラの数々。苦笑

う~~~ん、あのボランティアのカレーこぼしたドンくさい子、何かの伏線?やけに気になるんですけど。

 

W座からの招待状で小山薫堂さんがおっしゃってましたが

「空白」は「空が白い」と。

 

花音の好きなものを何ひとつ知らなかった充が

唯一同じ世界を見て繋がっていたものが

海に浮かぶ「白いイルカのような雲」だったのがとても悲しくて印象的です。

 

死んでからじゃ何もできない、と言いましたが

身近にいる人との心の距離感から生じる空白があるのなら

後悔しないために埋めてゆく、というのが遺された者に出来ることなのかもしれません。

自分自身が今からも尚迎えるであろう大事な別れを迎える時に、後悔しないために。

 

私、考えちゃった映画は結構二度見たりするんですが

この映画は間をあけないとリピートする気にはなれないですね。

 

でも、是非お勧めしたいと思います。

 

古田新太さんは相変わらず鬼才でしたよ。

撮影終わって早く飲みに行きたい人なのにね。笑

 

 

さいごに。

ビーバーの「ありがとう」聴きたくなっちゃったから貼っておきます。

大好きな曲です。

 

 

 

 

 

ではでは。