「みんな元気にやってるか?
新型コロナで緊急事態宣言が出てるから,マスク,うがい,手洗いはしっかりやってや.
さあ,『ラジオでごめん』のコーナー行くでぇ.
ざんげのメッセージを聞かせてや~」
それは,毎週土曜日の深夜にやってる電話でリスナーの生の声を伝える千代お気に入りの番組だ.
最初は貫太から面白いラジオやってるからと前に勧められて,それから,千代もずっと聴いていた.
「今夜の1人目はHさん〜.
今晩は」
「今晩は」
「誰に謝りたいんや?」
「両親です」
「どないしたんや?」
「今,お付き合いしてる方なんですが...」
「おぅ,その方が?」
「女性のパートナーなんです」
「うーん,そうか.同性か」
「はい」
「最近よく聞く,LGBTや」
「はい」
「両親はそのパートナーのこと知ってるんか?」
「知りません」
「...儂はな,大賛成や.
我が子がLGBTでも,賛成するわ」
「そう言って頂いて,ほんとに嬉しいです」
「たまたま,好きになったパートナーが女性やっただけのことや」
「そうなんです」
「儂も応援するでぇ」
「ありがとうございます」
「さあ,Hさん.
ご両親へざんげのメッセージをどうぞ」
「...
私は二人のお母さんの娘として,小さい頃からお母さん達の背中を見て,育ちました.
そして,大切なパートナーの方と出会いました.
私たちもお母さん達の様に,手を取り合って生きていきますので,見守っていて下さい.
今まで育ててくれてありがとうございました...」
「二人のお母さん,
どうかHさんたちのことを温かく見守ってちょうだいよ...
今夜はちょうど時間となったようやわ.
それじゃ,また,来週...」
千代はラジオの話が全く耳に入っていなかった.
これまでいつも貫太に甘えて束縛ばかりしてきた.
わがままばかりで自分の事しか考えてこなかった.
お互いを認め合って,信じて,これからも一緒に歩んでいきたい.
そうだ!
この『ラジオでごめん』のコーナーに申し込んで,それでもダメだったら...
貫太と別れよう.
そうしないときっと後悔する...
あれから,また,1ヶ月が過ぎた.
千代は,ハガキが採用され,
今夜,番組からスマホに電話が掛かって来る.
二人目の予定だ.
話す内容を書き込んだメモを声が枯れるほど読み返した.
千代はラジオの前でスマホとメモを握りしめて,時間が来るのをじっと待っていた.
そして,ついに放送が始まった.
「あぁ,ゴメンよ!こんな声で!
昨日から熱っぽいんや.
あかん,フラフラしてきた.
でも,みんなが待ってくれてるから...
さあ,『ラジオでごめん』のコーナー行くでぇ.
ざんげのメッセージを聞かせてや~」
「今夜の1人目はK君〜.
今晩は」
「今晩は」
「誰に謝りたいんや?」
「幼なじみのTさんです」
「どないしたんや?」
「Tさんの存在の大きさがわかったっていうか...」
「なんで離れてたんや?」
「他に好きな子ができたとかじゃなくて,自分の気持ちを確かめたかったから...」
「それで,君はこれからどうしたいんや」
「いままでの様に話したり笑ったり,少しでも一緒の時間を過ごして行けたらって...」
「その思いがTさんに届くとええな!」
「はい」
「さあ,K君.
Tさんへざんげのメッセージをどうぞ~」
「冷たくしてゴメン.ずっと一緒だったから,少し離れて自分の気持ちを確かめたかっただけなんだ...これからもずっと一緒の時間を過ごしていこう」
「はい,Y君,いつまでもTさんと仲良うやってや」
ヤバっ!涙を手で拭うけど,
次から次から溢れてきて,
メモに書いた字が揺れて見えない.
「今夜の二人目はTさん,
今晩は」...
