あれは去年の7月半ば。
夏とはいえ、雨上がりで何やら肌寒く感じられる未明の幹線道路。

4、5台連なった集団の最後尾。
店を閉めたワシは、家に帰るため車を走らせてた。

先頭の車はノロノロ運転。
きっと頭の悪い女が後ろの事も気にせず、ぼんやり運転してるんだろう。
蟹のような脳みそと左右に離れ過ぎた目の中年女で、
前方だけを凝視しながら必死でハンドルにしがみ付いてるに違いない。
そうに決まってる。

後ろに着けてしまった運転手達は、木枯らしに耐える針葉樹のように、
突然降りかかったこの神の呪いを、絶望しながらも辛抱していた。


と思ったら、そいつが急ブレーキ。
次々に灯る血のように赤いブレーキランプ。

みんな徐行して、何かを避けるようにして通り過ぎていく。
見たら、道の真ん中に白っぽい物体が落ちてた。

猫だった。それもまだ子猫。

車を停めて駆け寄るワシ。
濡れた路面に震えながらうずくまるそいつは、ワシを見上げて小さく鳴いた。


こうして我が家に猫は来た。