●ポイント
・公正な判断基準をもつことが重要
先日、テレビのドキュメンタリー番組で、ある有名なパン職人の方を取り上げられていた。その時に、ある面白い点に気づいた。その点とは「公正な規準をもつ人は信頼される」ということである。
まずは番組の内容を説明しておくと、ある小さな町に、世界でも賞を取る凄腕のパン職人の方がいた。パンの味がともかく絶品で、お客様が絶えないのもさもながら、その技術を学びたいと多くの弟子も集まってきた。そして、そのパン職人の方は、気概のある弟子を雇い育て、厳しい修行に生き残った者達に、彼らの故郷でパン屋を開いて欲しいと願っていた。
ある時、そのパン職人の方の下に、パン屋を開業したいという若い夫婦が、弟子にして欲しいと訪れた。しかし、彼らは全くパンに触れたことがなく、全て一から学ぶことを心に誓ってやってきたのだって。当然、パン作りは全くの素人なので、技術も何もない。必死で師匠(パン職人の方)や、先輩についていくのが、やっとであった。
ある日、弟子は師匠から、フランスパンの切れ目を入れるようにと命じられた。先輩の技法を見て、見よう見まねをするも上手くいかない。何度やっても駄目だった。だが、弟子は諦めずに、反省を繰り返し努力し続けていた。
あるとき、師匠はその弟子の作った一部のパンを、店に並べるように命じたのだった。その時の弟子の気持ちは、驚いたと同時に、大変嬉しかったに違いない。
この一連の流れを見て、私は「師匠が弟子のパンを店に並べた理由は、非常に熱心に頑張っているので、上手くアメとムチの、アメを与えたのかな」と思った。しかし、そうではなかった。
そのあと師匠は、弟子のパンを並べた理由をスタッフに尋ねられて、こう答えた。「出せる商品に仕上がっていたからです。おそらく奇跡でしょうけどね」
そう、あくまでパンを商品と並べたのは、商品として仕上がっていたパンだからであって、決して頑張っていたからという理由で、店に並べたわけでは、全くない。私は、この判断の差は、非常に大きいと思う。
多くの人は、あるモノゴトを判断する場合に、それ自体の価値以外にも、様々な規準を考慮して判断している。例えば、それがブランド品であったり、有名人が使っていたり、はたまた偉い学者さんが推奨していただけであったり。たしかに、それらの情報である程度、高価値を担保されるかもしれないが、本当に価値があるものなのかどうかはわからない。
ところが、公正な判断基準を持っていると、それ自体の価値の良し悪しを見抜き、判断できるようになる。そして、それを身につけるのは熟練が必要になるので、大抵の場合、そうした判断ができる人のほうが、勉強家であるし信頼もおかれやすい。ブランドロゴ品ばっかり身に付けたり、偉い人が言っていたから信じたりする人は、あまり面白味があるとは思えない。
先ほど述べた師匠は、公正な目で、パンだけの価値を見抜いて判断しているに違いなかった。私も自分の中に、そのモノゴト自身の価値を見抜く、公正な判断力を身に付けたいものだ。そこまで見抜けないにしても、雑音には流されないよう、少なくとも自分で考えたいと思う。
