(前回から続く)

 

「いきなり売れるということはないよ。最初はまず、会ってもらうことすらできないと思う。情報を持って行くようにすれば会ってくれる確率が上がるよ。」

 

係長の言葉を信じ、飛び込み営業を始めました。

 

最初の2~3日は、心臓がどきどきしましたが、その後は飛び込みで営業に来たと応対してくれる方に告げるところまでは、抵抗がなくなりました。

 

勿論、会ってくれるお客様は殆どいません。運よく会っていただいても、話が続かず10分程度で退散することがほとんどでした。

 

この頃の私は、経験はない、商品知識もない、業界のことも良く知らない、とないないづくしでしたから、当たり前です。係長の言うとおりに、情報を持って行くようにしたのですが、自分が貴重な情報だと思って得意になって話をすると、苦笑いされることが殆どでした。

 

そのうち、お客様のところに行って担当者の方をお願いします、と告げたあと「あいにく不在です」と言われることを期待するようになってしまいました。

 

喫茶店で時間をつぶす日が続きました。

 

見かねた係長が

 

「商品や業界のことを話そうとしなくても良いよ。世間話をしにお茶を飲みに行けばよい。まずは、続けて会ってもらうことだ。ヒデボーのことを気に入ってくれる人が必ずいるはず。営業というのは商品を売るのではなく、人を売り込むんだ。君のことを気に入ってくれるお客様なら、同じ商品を他社の営業が持ってきても、君から買ってくれるよ。」

 

とアドバイスしてくれました。

 

商品を売らなくても良いんだ・・・。だいぶ気が楽になりました。

 

余計なものは持たず、最低限のカタログ類だけを持って営業に行くことにしました。とにかくお茶を飲みに行くんだ、自分に言い聞かせました。

 

最初は余り変わりませんでした。

 

「どうしたらいいんだ・・・。」


コートなしで外回りするのは少しつらくなってきたその頃、転機が訪れました。

 

(次回に続く)

 

 

その頃、新入社員は入社から1か月間全員揃って研修でした。その間、配属先は発表されません。

 

研修の最終日に配属が発表されます。新入社員の数が多いその会社では、全員の配属先を記載した冊子が配布されました。

 

それを見た私の同期の1人が

 

「ヒデボー、営業に配属だよ。希望してなかったよね?」

 

と教えてくれました。

 

ショックでした。何が何だか分かりませんでした。よりによって、一番やりたくない仕事になるなんて・・・。勿論希望したことはありません。「会社なので自分の望まない仕事をしなければならないかも」と覚悟はしていましたが、いざそれが現実になると、相当落ち込みました。目の前が真っ暗になりました。

 

その日はどうやって寮に帰ったのか、後から思い出そうとしても覚えていません。

 

その後、実際に配属されるまで更に2か月間研修が続くのですが、正直言って全く気乗りがしませんでした。同じ部署に配属が決まった同期の中に非常に気が合う者がいたのだけが大変な救いでした。彼も私も、今は別の会社に勤務していますが、30年以上経った今でも時々会っています。彼がいなかったら途中で折れていたかもしれません。

 

さて、7月になり、いよいよ職場に実際に配属されました。10歳年上の係長クラスが指導者になり、いきなりOJTです。

 

1か月と少し、係長について毎日お客様を回りました。そして、夏休みが明けたある日

 

「ヒデボーもそろそろ1人立ちしなければね。」

「ついては、このリストにあるお客様を片っ端から飛び込みで回ること。」

 

と、突然言い渡されたのです。

 

私に手渡されたリストは、東京都内の中小金融機関約60の名前と住所が一覧表になったものでした。

 

頭の中では

 

「??1人立ち?飛び込み?まだ、配属されて1か月しか経っていないんだ。できるわけないだろう!いったいどうしたら良いんだ!!」

 

という声がリフレインしました。多分表情に出たのでしょう。

 

「ヒデボー、不安だと思うが、これをやれば力になるぞ。」

 

係長の声がうつろに響きます。

 

(次回に続く)

こんにちは。ヒデボーと申します。

 

このブログでは、アラフィフの管理職である私が、働き方や生き方について感じること、考えることを書いていきたいと思っています。

 

ブログの題名は、昔良く読んだ、片岡義男さんの小説の題名をそのままいただきました。

もともとは小説の題名なのですが、今では私のお気に入りの言葉の1つになっています。

小説の中身は全く記憶になく、内容とは無関係に題名だけを自分なりに解釈して、お気に入りにしています。

 

人生は、色々な要素が混じり合い、それらが時間を経過して変化していくものです。

その変化は、自分で全く予測しない方向への変化かもしれません。でも、最後はなんとなく良い感じになるのではないでしょうか?

 

野菜スープに似ていませんか?色々な材料を時間をかけてぐつぐつと煮込んでいく、最後は思ったより甘かったり、辛かったり(?)しますよね。でも、色々な野菜から溶け出したエキスが、そのスープならではの微妙なハーモニーを奏でていたりします。なんとなく良い感じなんです。そして、同じ味は二度と出せなかったりします。

 

私は人生とはそういうものではないかと思っています。自分の思う通りにはなりません。でも、何となく良い感じになっていくのではないでしょうか?

 

さて、まず自己紹介です。

 

他人から、波乱万丈の人生と言われる私がどんな人間なのか、どのように働いてきたのか、知っていただきたいと思います。今日はその1です。

 

私は、大学卒業後、あるメーカーに就職しました。その分野では日本を代表する企業の1つです。

 

大学生のときは、自分が何をしたいのか、何をしたらよいのか皆目見当がつきませんでした。そんな中、周囲は3年生の終わりくらいからドンドン就職モードになっていきます。自分だけ取り残された感じでした。

 

大学3年生の後半にもなると、他にやることもあまりなかったので、とりあえず就職活動をすることにしました。

 

約60社くらいにアクセスし、面接やOB訪問にこぎつけたのがそのうちの約半分、内定は2社からいただきました。そのうちの1社が私が就職することになった会社です。

 

周囲に流されるままに就職活動しただけなので、その会社でやりたいことは特にありませんでした。

 

しかし、やりたくないことは結構明確でした。それは「営業」です。その頃の自分は、自分は対人関係が余り得意ではないと思っていました。だから、営業だけはやりたくないと考えていたのです。

 

しかし、メーカーなので文系学部出身の私にはできることは限られています。

 

入社してすぐに、私の職業キヤリアにおける最初の波乱が起こります。

 

(続きは次回)