私、この台詞は言いたくない!・・・エッ?!
2時間ドラマの撮影中にアシスタントが「監督、直ぐスタジオへ来て下さい!」と言うので急いでスタジオへ行った。と、出演者の女優《その時は売れっ子の若手女優だった》が、「監督、私この台詞は言いたくない」「どうして?」「だってこの台詞を言うと、私って嫌な子になるでしょ?」「イヤ、これはドラマだから、あなたが言ってるんじゃなくて、役の人物が言ってるんだからね」「アラ、だってお客さんはそんなこと思わないでしょ? 私が映って、私が言ってるんだから、私が嫌な子になるでしょ?」・・・頭を抱えた私は台詞を少しだけ直して撮影した。しかし、あとで考えて、その子(若い女優)が言ったことは決して間違いではないと考えた。テレビドラマは日常会話で進行する所為か、本人が言っているようにお客さんは思うことに気づいた。人気になるドラマで役名を覚えている人は少ない。やはり役者本人の名前で、良かった、つまらなかった、という会話をになっているからだ。その当時、その若い女優の言葉が広まり、有名な女優さんたちの間でも『私、この台詞言いたくない』という言葉が流行った。勿論ジョークで言ったのだが。最近、アマチュアの年配の女性に台詞のレッスンを行った。バナナのたたき売りの口上の最後で「・・・サア、持ってけドロボー!」で終わるのだが、その女性は「サア、持ってけ・・・」で終わってしまい、何度やっても最後の「ドロボー」を言わなかった。「最後の台詞まで言ってください!」「私、今までこういう言葉を使ったことがありませんので言えないんです・・・」「?・・・」しばし呆然!!