ドイツ、ニュルブルクリンク戦が終わり、次戦はフランス、ポールリカールです。
そして1週間あけて、ベルギー、スパ・フランコルシャンと、まるでF1グランプリのように転戦するイギリスF3選手権。

将来F1で走ることになるサーキットを、練習するために転戦しているのだそうです。


もともと、F1ドライバーになるための最後のステップという位置づけだったこともあって、参戦しているチームは皆、かなりレベルが高いというか、プライドと志(こころざし)が高いです。

どのチームも、我々はF1ドライバーを育成しているんだから、という意識がすごく強いのが特長です。

だから、ドライバー育成の努力は誰も惜しみません。


たとえば、トップチームのカーリンで優勝したケビン・マグヌッセン選手の走行データは、カーリンのチームで走るドライバーはもちろん、エンジン・サプライヤーのフォルクスワーゲンを通じて、ウチのチーム(ハイテック)でもすべてチェックできます。

そこで、ケビンの凄さ(ブレーキングは本当に芸術的!)を確認して、その凄さが真似できるようにウチのドライバーを指導していくわけです。


もちろん桜井孝太郎選手も同じで、ライバルのバート・ヘレキマ選手の走行データは、すべて確認できるようになっています。

自分が負けているところ、勝っているところをチェックして、その負けているところをどうやったら、互角以上に持っていけるのかを、データ分析して走りにフィードバックするのです。

ですからタイム差はすぐに縮まってきます。コンマ2~3秒という僅差になります。

逆にヘレキマ選手も、桜井選手のデータを細かく分析して、勝負に対する作戦を練ってくるわけです。

みんなどんどん速くなり、勢いよく上手くなるのは、参加者全体に、こういったオープン・マインドがあるからです。


全体のレベルが勢いよく上がっていくのが、本当に現場ではよくわかります。
ひとりが、ひとつのコーナーを全開でいけば、次のセッションでは全員が全開でいきます。

シフトやラインもどんどん似てくるので、逆に接戦になるけれど、ライバルを抜くためにはなにかもうひとつ必要になってきます。

それは....飛び込む勇気。

一瞬のスキを見せると、誰もがインに飛び込んでくる。そんなレースがイギリスF3の魅力です。


ニュルブルクリンクで、ヘレキマ選手のインにバンザイ・アタックを仕掛けた桜井孝太郎選手も、それをしなければ抜けないと覚悟したから、飛び込みました。観客も沸く、アタックでした。

競技長がクレージーだと断言しましたが、マネージャーの自分としては、もちろん危険行為は反省してもらうにせよ、17歳になって、男になったなぁ(笑)と、感心した次第です。

走りのデータも、GP3ドライバーで、今回スポット参戦でいきなり2位表彰台を獲得したアントニオ・フレックス・ダ・コスタ選手の走行データと比較して、まったく遜色なしのレベルまで良くなってきました。

ステアリングワークは桜井孝太郎選手のほうがスムーズなぐらいまで成長しました。
ブレーキングポイントもまったく同じ。アクセルワークも、同等以上です。

エンジンのパワー差、ダウンフォース量が違うので、タイムは全然違います。
でも、我々はデータから、ドライバーのテクニックを見抜けるわけです。

チャンピオンクラスのマシンに乗せるタイミングも近そうです。

今週はシルバーストンで、F1イギリスグランプリ。
いま住んでいるこのアパートからは音が聞えるほど近いサーキットです。

明日、某チームのマネージャーに呼ばれているので、お昼に顔を出してきます。
なにかいい話になるといいのですが(笑)。