被災地の皆さんに、ただ無事を祈ることしかできない無力さ....。


その日の朝、イギリスのテレビ映像はこの世のものとは思えない悲惨な映像を流し続けていた。

日本、TUSNAMI 、地震...。耳に流れてくる音声と、映像は、それが日本であることを示していた。

しばらくは呆然とするしかなかった。信じるとか、そんなレベルの映像じゃない。

真っ黒な濁流に飲み込まれていく多くの人、動物、そして押し流される家、車、船....。

何度も何度も繰り返し流される映像。阿鼻叫喚の地獄絵図。

この世の終わりを告げるかのように、すべての希望を流し尽くす津波の恐怖。

津波、それは英語でもTSUNAMIだ。

イギリスのTV局は、日本のニュースだけを何時間も何時間も流し続けている。

それほど、ヨーロッパを震撼させる出来事だった。

世界を震撼させる出来事だった。



東京に何度電話をしても、全然つながらないもどかしさ。

テレビから流れてくる、「首都、東京も悲惨だ」というニュース。

いても立ってもいられず、チームとのミーティングをキャンセルして空港に向かった。

帰れるかどうかもわからないけど、イギリスにいて何もできないよりは、とにかく日本に向かう飛行機に乗ると決めた。

結果、わずか数日の滞在ではあったけれど、途方もなく悲惨な被災地の状況を、まぎれもない現実のものだと受け止めることはできた。

自分の事務所の被害はたいしたことがなかったけれど、日本の被害は重大だ。


こんなとき、人は言葉を選びようがない。


脇坂寿一選手が、SAVE JAPANを合い言葉に、モータースポーツ界から義援金を募った。


井出有治選手も、自らのサイトで義援金を募る。



できることから、始める。小さなことでも、前に進む。

いまはそれしかない。





そしてまた僕はイギリスにいる。

こちらではリビア空爆のニュースで、また大騒ぎだ。

世界は何か狂い始めているのかも知れない。


ガソリン不足の状態なのに、モータースポーツをやっている場合じゃないと、冷たい言葉を投げかけてくる人もいた。

確かにある意味、正論にも聞こえる。想像以上に、モータースポーツ界にとって状況は厳しい。


でも、自分たちの夢を追い求め、挑戦を続けることで、人々に元気を与えられると信じるしかない。

僕たちは、生きている幸せを忘れず、前に進むしかない。

今日を生きている自分たちは、今日を生きたかった何千、いや何万人もの人たちに対して、失礼にあたるような生き方だけは、決してしたくないから。

$モータースポーツ疾風怒濤2011