“ラテのお客様。ご用意できました”店員の声が届いた。
ふと目が覚めた。
気持ちのよいBGMで寝ていたようだ。
携帯から声が聞こえる。
耳を充ててみた。
「あ、そうそう、いい忘れたんだけど、ギターもってきてよ。久々、中野君の歌が聞きたいわ~」
「え?」
「え?て。だからOB会の話の続きで」
今までの物語はすべて夢だったのだろうか。
坂本に電話をかけてみた。
「あれ?中野?元気か?そうそうフォーク部のOB会があるらしいけど聞いたか?」
「お前、坂本やんなあ?」
「はあ?どないしたんや。当たり前やろ。ははは」
「プログラムのことを俺に話したよなあ?」
「プログラム?OB会の?」
「じゃなくて、その、脳の」
「脳?お前なんか変やぞ。じゃまたOB会で」
この光景もまたプログラムなのか。
いや、もうそんなことはどうでも良い。
大事なことは今だ。
今を変えれば、次々にやってくる今を変えることができる。
そして今を確実に生きていけば過去も変えることができる。
過去は今の脳に記憶として残っているのだから。
俺が過去2回通過した介護に明け暮れた毎日。
同じ行動だったのかもしれない。
しかし、一つ一つの行動に責任をとりながら、自分が選んだという認識をしっかりと持ち、行動した人生にはもう後悔はない。
彼は目覚めた。
「よく頑張ったね」
そこには白髪の老人が立っていた。
自分は雲の上に立っている。
そして、あたりを見渡すと、星のようなキラキラしたものが、一瞬で離れ、一瞬で帰ってくる。
そして、また帰ってきたその星にも、その老人は「よく頑張ったね」と言っている。
彼は気付いた。
一瞬で行き来し合うその星はそれぞれの人生を生き、そして帰ってきたのだ。
自分の84年の生涯は一瞬のうちに終わったのだ。
幾つもの脳が宇宙に浮かんでいた。