【司法試験出願者激減】法科大学院制度の失敗? | 二階堂英明のリーガルクエスト

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令和4年度司法試験出願者数は過去最低の3,367人

日弁連の選挙がありましたね。

弁護士の皆さんは、日弁連の選挙関連の資料がたくさん送られてきていませんでしたか?

私は、ほぼ読まずに処分してしまっていたのですが、さらっと読む限り

 法曹を増やすかどうか(司法試験の合格者数を増やすかどうか)

がHOTなトピックになっているように感じました。

勘違いかも知れませんが。

 

私は、司法試験関連の話題には最近全く触れてこなかったので、最近の傾向を知ろうと思って少し検索してみました。

なんか、3日ほど前に法務省が来年度(令和4年度)の司法試験出願者数を公表したようです(以下のヤフー記事)。

 

 

何と、その数が驚きの3,367人でした。

これ、全体の出願者数ですよ?

私が受験したときは1万人以上はいたと思いますので、めちゃくちゃ少なくないですか?

 

冒頭で書いたとおり、「合格者を増やせ」とか「増やすな」とか議論されているようですが

私は、合格者数の増減よりも、出願者数の激減の方が気になりますよ…。

これって、弁護士が全然人気ないってことの証であり、また、優秀な人材が法曹界に来てくれていないってことの証でもあると思うのです。

 

上記記事によれば「減少止まらず」とのことで、令和3年度以前はどうだったんだろうと思って法務省HPで確認してみました。

 

 

司法試験出願者数は10年前の3割以下に…

法務省HPに掲載されているPDF資料を基に、新司法試験が始まって以降の出願者データなどを少しまとめてみました。

 

平成24年からは予備試験組による受験も始まっているようなので、内訳にはこれも考慮しました。

 

なお、予備試験というのは簡単にいうと「飛び級試験」のようなものです。

法務省は、平成11年から始まった「司法制度改革」の一環として

 法科大学院を卒業した者しか司法試験を受けられない

という新司法試験制度を開始したのですが、その特例というか裏口(?)として

 予備試験をパスした者は司法試験を受けてもいい

という予備試験=「飛び級試験」を設けたのです。

 

また、上記表の合格率はそれぞれ、法科大学院出身者内での合格率、予備試験合格者内での合格率を示しています(分母は各出願者)。

 

これを見ると、新司法試験出願者は、そのピークである平成23年(11,891人)までは増えていったものの、その後10年は下がり続け

なんと約10年後の令和4年試験時にはピーク時の約28パーセント程度の出願者数である3,367人まで減少してしまった、ということになります。

 

実に嘆かわしい。

ここまで激しい下降曲線を描いているとは思っていなかったので、相当ショックです。

ってかこの状況、マジでヤバくないか…?

 

 

合格率は上昇傾向にあるが…

他方で合格率(法科大学院出身者)については、出願者が最多であった平成23年こそ17パーセントに留まったものの、概ね20パーセント前後を推移していて、今年度は30パーセントを超えたようです。

もちろん、法科大学院の修了(又は予備試験の合格)が受験資格となっており、誰でも受けられる試験ではないため

単純に「3割受かる試験ですよ!」とおすすめできるわけではありませんが、この数字は悪い数字ではない気がします。

ただ、ここまで書いていて、多くの弁護士が「合格者を増やすの反対」と声を挙げている理由も理解できるような気持になってきました…。

だってこれもう、「合格率の増加」と「出願者減少」とに明確な相関関係ありますよね…。

合格率上昇の理由として、「受験者層がここ数年で急に優秀になった」とは考え難いと思いますので、合格者の能力的なクオリティが担保できているのか、という懸念が拭えません。

近年の合格率が上がっているのは単に

 合格者数の減少比率以上に出願者数の減少比率が激しい

つまり

 司法試験が不人気であるが故に合格率が上昇している

という理由に過ぎないように思われますが、どうなんでしょう。

 

合格者数をバッサリと切れない、急激に減少させられないのは、法務省が法科大学院を作ってしまった手前、そう簡単には合格者の総数を減らすことはできないということでしょう。

ただ、このような中途半端な判断で合格率が上昇してしまうことについては、「司法試験合格者の能力が下がっているのではないか」と、社会から疑問の目で見られないか、個人的には気になってしまうのです。

(決して、最近の合格者の能力が低いとか言いたいわけではなく、あくまで「そのように思われかねない」という法曹資格の社会的信頼についての話です。)

 

合格者数を減らさないで(あるいは増やして)合格率を上昇させるにも

 出願者数を増やして優秀な候補者・人材を多く確保する、という前提が必要なのでは?

と思うのです。

 

 

予備試験合格者の司法試験合格率は異常

ところで、上で書いたのは、ほとんど法科大学院を修了して司法試験を受験する、という本来のルートについての言及です。

上記指摘は予備試験合格者にはほとんど当てはまらない気がします。

予備試験合格者の司法試験合格率は、基本的には60パーセント超をキープしており、50パーセントを切ったことはありません。

法科大学院修了者との合格率の差は歴然です。

そして、本年度は驚異の合格率91パーセントです。

本当に優秀ですね…。

 

本年度の予備試験合格者の脅威の合格率については、法務省の意地で合格者1,400人を死守しようとしたところ

相対的に優秀な予備試験合格者はほとんど合格してしまった、というのが実情のような気がします。

上記は法科大学院修了者の合格率(LS合格率)予備試験合格者の合格率(予試合格率)をグラフにしたものです。

なお、予備試験に受験資格はなく、予備試験の最年少合格者は17歳だそうです…(スゴイ)。

 

他方、法科大学院は入学から修了まで2~3年は絶対に必要であり、私立だと年間百数十万円の学費が必要になるようです…。

 

この差はなんなんだ…。

なお、いわゆる予備試験組の弁護士のお仕事能力についてですが、私が今まで出会った先生方は

 若いのにしっかりしていたり

 物腰が柔らかで親切であったり

 クライアントへの配慮もきちんとできていたり

と、能力的にも素晴らしいものをお持ちの先生が多いように思います。

法科大学院出身者と予備試験組とで、個人的には、仕事のクオリティについて特に差は感じません。

 

 

法曹資格取得の魅力を発信し、司法試験受験者を増やすことに努めるべき

以上、長々と書きましたが、率直に言ってここまで司法試験が人気なくなっているとは思ってもいませんでした。

これは早めに手を打たないとまずい、というかもう手遅れな気もします。

 

弁護士もののテレビドラマなんかはたくさんあるので、潜在的な法曹の人気はまだまだあると思うのです。

ちょっと前に、裁判官もののドラマとかもやってましたしね(見ていませんが…)。

なんとか、法曹志望者を、そして司法試験受験者を増やす必要があると思います。

 

そもそも人気が無くなった大きな理由は、高いお金かけて何年も通わないといけない、法科大学院の創設にあると思うのです。

法科大学院を廃止して、予備試験に一本化とかどうでしょうか。

法務省が「法科大学院制度は失敗でした、ごめんなさい」という声明を出せばまだ間に合う気もするのですが

官僚が自らの過ちを認めることはできないと思うので期待できないでしょうね。

 

兎に角皆さん、弁護士は面白いですよ!

裁判官も検察官も面白い仕事ですよ!

法曹は、社会の裏側を見たりそこで仕事が出来たりする特殊な仕事です。

人の役に立てる仕事ができる、という遣り甲斐もあります。

 

皆さん、少しでも興味ある方は、是非、司法試験合格を目指しましょう!

 

私も司法試験人気の回復に何かできないか、考えていきたいと思います。