電子書籍のことを考えるときに、我々が使う言語が日本語であるという、ごく当たり前のことが実は重要なファクターであることが、電子書籍という時代の寵児の勢いの前で意外と見落とされていたり、軽視されていると感じることが少なくない。

Webやケータイは勿論、そしてビジネスで使う様々な文書、ドキュメントもほとんどが横書きで、まったく違和感がないと言って良い。ビジネスの中でも縦書きの挨拶文などを受け取ることがあるが、ものすごく形式張って大仰な印象を受けるし、それは決まって印刷物だ。

今や日常で縦書きの文章を読むのは、新聞や雑誌、書籍に限定されてきていると言っても良いくらいだろう。日本での電子書籍は、この残された縦書きの文化にどう入ってくるのか、それをどう変えるのか、あるいは電子書籍がどう適応するのか、という問題でもある。

読んで情報を取り込むという行為においては、日本語の横書き形式というのは、当然問題は全くなく、和洋混交で使うことが多い現在では恐らく横書きの方が効率がよい。その意味でも、情報コンテンツを主に扱う新聞や多くの雑誌は横書きで問題は少ないし、事実横書きの新聞も出てきている。Web版との連携が新聞の今後の道筋であることは間違いないだろうから、新聞自体が横書きになっても不思議はない。ただ、その時は紙の大きさやフレームの組み方に大きな変革が必要になるので、そこまでして新聞の読み方を変えるのは電子書籍端末での新聞で、紙の方は今のままなのかもしれない。

次に電子書籍で横書きになっても不思議でないのは雑誌だろう。これも一つ一つの記事はそれほど長い訳ではないし、ネット上で展開されているWebマガジンを見ても違和感を余り感じない気がする。新聞もそうだが、雑誌も電子書籍になっても、ハイパーリンクで他の情報を参照できたり、写真の代わりに動画を使ったり、極めてWeb的な進化形になって行く可能性も充分にあるように思う。

ところで、電子書籍端末の有力候補として比較されることの多いキンドルとiPadで一つ大きな違いが考えられるのが、このWeb連動かもしれない。汎用機でもあるiPadはネットに接続されている環境では、新聞や雑誌、電子書籍を読んでいる途中でも、リンクでWebに飛んだりコンテンツを引き込んでくることが可能だろうが、電子書籍専用の端末であるキンドルは、3G網などを経由してネットに接続できる環境であっても、ストア以外のWebにリンクすることはなさそうだ。

そして、電子書籍で日本語がどう表示されるのかがポイントになってくるのは、本丸と言っても良い「本・書籍」である。小説などの文芸書だけでなく、ビジネス書などにおいても、本で文章を読むときのシックリ感というのか、特に大量のボリュームを読んで聞くときに、縦書きを好むのは、単に慣れの問題ではないようにも思える。とすると、電子書籍に期待されているのは、如何に心地良い形で縦書きの文章を表示して読ませるのかということになるように思う。そこにフォントやルビの問題も加わり、日本での電子書籍の普及に大きく関わってくることになる。AppleやAmazonがこの辺りの問題にどう対応してくるのか、私はまだ明確な答えを聞いたことがない。