むかしは読書が大嫌いだった。

学生の時代から40代になるころまで、ほとんどまともに読書ということをしていなかった。

その私がなぜか村上春樹だけは結構な数を読んでいる。何がきっかけだったのか、は勿論思い出せないのだが、読んでいた雑誌か何かで気になって「1973年のピンボール」を読んだのが最初だった、と思う。その後、「風の歌を聴け」、「羊をめぐる冒険」のいわゆる3部作を読んで、短編集などを読み、「世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド」に至った。この作品は、細かな内容は良く思い出せないものの、とにかく読後の満足感と良い作品だったという印象だけは今でも鮮明である。

その後、村上春樹は「ノルウェイの森」でさらに人気を増して行くのだが、ノルウェイの森は赤と緑の美しいハードカバーが発売当初から開かれることなく、書棚に鎮座している。

村上春樹のどこが気に入っていたかについては、これも意外と記憶が鮮明にある。私には村上作品の、どこの話か判らない異空間的な感覚や、やや分裂症的にも感じられる世界観や展開が自分の感覚にものすごくフィットしていた。この人の頭の構造ってきっと俺とおんなじだって、思っていた。ほとんどの人には春樹のほんとうの本質は理解できていないのではないかと、若い私は内心いきがっていたりもした。

先日のエルサレム賞の授賞スピーチの後に、久々に村上春樹の本を開いてみた。
どうせなら、と思い、一番古い「風の歌を聴け」を取り出し、20ページほど読んだだろうか。

無理です。

かなり好きだったはずなのに、今でもかっこいい文章だとは思うが、30年近い年月はあまりにも長いのか、どうしても青臭さが鼻についてしまう気がするのだ。

やはり、その時々に合った作品というのはあるのだろう。本を余り読まなかった時期に気に入っていた本だからと言って、今も同じように感じるとは限らないし、むしろ同じでないと考える方が自然なのだろう。

読書をするようになったのは、今からだいたい十年少し前になってからである。

最初はここから話を書くつもりでこの文章を書き始めたのだが、村上春樹で横道にそれてしまって、長くなってしまった。。。。続きは次回に。