晴れ渡る雲居に近い梯の天上人の来るまで待て

5日、桐畑古墳公園

明日では遅い。今を逃せば、もう散り始めてしまう
人の背中を押し、何か忙しい気分にさせる霊力が、桜の花にはあるらしい
けれども、散る時期の桜の見事さも忘れたくない
最後の瞬間まで気力を張って咲き切り、ふと思い立ったかのように飛び去ってゆく
今、その花びらが、色褪せないまま地面や川面を覆っている

西行が登場する世阿弥の能に「西行桜」がある

西行は嵯峨の山奥の庵で、ひとり静かに桜を楽しみたいが、都からガヤガヤと花見客が押し掛けてくる

人が群れるのが桜の欠点だ、とこぼすと、老人の姿をした桜の木の精が現れて反論する

「わずらわしいと感じるのは人間の心の問題であり、桜の罪ではない」

日経「春秋」参考