彼は過去10年の山歴を考えた

武庫川の桜

数限りなく困難な場に遭遇して、

桜のトンネル一本道

その度に、その壁をぶち破って、登山家として生長し、技術者として生長してきたつもりでいた

六甲山の夕陽

だが、その生長の方法は、あまりに孤独であり過ぎた

加藤文太郎の生長を生長と認めている者はごく少数でしかなかった

満開の桜並木

作者の新田次郎は「なぜ山が好きになったのか私には分からない
山がそこにあるから、などという簡単なものではない。私が信濃の山深いところに育って、そして今は故郷を離れているという郷愁が私を山に牽き付けたのかもしれない
しかし、これは私なりのこじつけで、私のような山国の生まれでない人で、私より以上に山を愛する人がいるのだから、山が好きだということは、もっと人間の本質的なものかもしれない

私は山が好きだから山の小説を書く

山好きな男女には本能的な共感を持ち、彼らとの交際の中に、他の社会で見られない新鮮なものを見つけ出そうとする

のびのびとしたように見えていて、実は非常なほど厳しい山仲間の世界の中の真実が私には魅力なのである

六甲山残照

新田次郎「孤高の人」・尾崎秀樹解説より