小窓雪渓

柴崎芳太郎は、岩に腰をおろして、望遠鏡で登路を探した

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幾つかの尾根と幾つかの雪渓が天に向かって延びていって極まったところが頂上であった
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頂上付近は険阻な岩峰に囲まれていて、容易に登れそうもなかった
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望遠鏡のピントを頂上に合わせて仔細に観測すればするほどその険しさが目に付いた
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どれか一つの尾根を目の中に入れて、それを伝って登ろうと考えてみても、天を睨んだ鋸の歯のように分離されているその岩の歯一枚一枚を渡って行くことは出来そうもなかった
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三ノ窓雪渓の下部は山肌が出ていたが、上部は白く固く輝いていた
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途中滝の部分が落ち込んでいて、危険な場所があった
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長次郎は常に先頭を歩いていた。鳶口構えて、何時何が起こっても、それの対処できるような準備をしていた
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柴崎は三ノ窓雪渓を登りながら、左方に見える、八つの岩峰の尾根の観察を続けていた
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険しくて、とても近づくことができるところではなかった
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三ノ窓雪渓も窓までは行く必要はなかった。窓そのものが絶壁であって、人が近づくことを拒否していた
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柴崎は、尚も登ろうとする長次郎を呼び止め、雪渓の上に坐り込んで、付近の地形のスケッチを済ませてから帰路に着いた

(剱岳点の記より)