7月4日読売新聞「気流欄」
①「登ってよかった石鎚山」・・・気乗りがしなかったが家族に誘われるまま登った。鎖の付いた崖をよじ登ることもあり、母は転落しかけた。下で支えてくれる人がいて、胸をなでおろした。山頂から眺める景色は素晴らしく、悩みも吹き飛ばしてくれ、水も美味しかった。
②「遭難を覚悟した英彦山」・・・中学の卒業記念に登った。山頂でとった食事は格別だった。下山途中、強い雨が降り始め、視界が悪くなった。引率の先生からはぐれ、声を出して助けを呼んだが風雨でかき消され、私たちは遭難を覚悟した。しばらくすると雨はやみ、霧も晴れ、先生たちと合流できた。
③「呼び名が異なる大山」・・・鳥取県では伯耆富士、島根県では出雲富士と呼ぶ。私は松江出身で朝に夕に、この出雲富士を見て育った。校歌にも「れいろうはるか出雲富士と歌っている。呼び名はともかく、私はこの美しい山が好きだ。
④「真っ先に行きたかった白山」・・・冬の空気が澄みきった日には白山が眺められる。04年に九州から赴任してきた私にとって、白山は行きたかった場所だ。夫とドライブに出かけた。なだらかな山並みに紅葉が広がり、錦絵のような景色。日本を代表する名山に間違いないだろう。
⑤「世界最大級のカルデラ・阿蘇山」・・・噴煙を上げる野性的な中岳、緑に覆われた米塚、初夏には草原の緑、秋はススキが逆行を浴びて美しい。阿蘇山は私たちに爽快感を与えてくれる。年を経るごとに、阿蘇の大きな懐に抱かれる幸せを一層感じる。
⑥「紅萌ゆる吉田山」・・・京都大学の近くにある吉田山。旧制三高の寮歌に歌われただけあって、今も昔も学生たちに親しまれている。最近、この山に新たな魅力が加わった。京都の学者がこの山にちなんで小惑星に「yosidayama」の名前を付け、国際天文学連合が登録した。伝統と学問と宇宙が融合した古都の小山。市民の癒しの空間であり、散歩する私にとってもなくてはならない場所だ。
⑦見渡す限りの海・利尻山」・・・6年前の夏、友人と利尻山に登った。昼頃頂上に着き、10数人が休むことが出来る平地となっている山頂の中心に座った。青空の下、眼下には漁船が見え、見渡す限りの青い海が広がる。美しい景色は忘れることが出来ない。一寸先は崖で足は震えたが、壮大な自然に包まれ、心は躍っていた。春、雪に覆われた山頂の白さと空の青さの対比も見事だが、夏に頂きから見下ろす眺めは格別に素晴らしい。
⑧「日本一の誇り・富士山」・・・姪の結婚披露宴で薄暗かった式場のカーテンが空き、大きな窓から富士山が一望できた。どよめきと拍手がわき起こった。見慣れている景色だが、特別なマジックを見ているようだった。他県からの参加者に日本一の山である富士山を誇ることが出来、最高に幸せだった。