毎月1回の塾がしばらく間遠になっていたので、久しぶりに師匠の山田壽雄さんの事務所を訪ねた。
四方山の話の中で「石川さんはお金が好きか」と尋ねられた。
「うーん……、好きですね」
この歳になり、物欲はあまり感じない。
差し迫ってお金に困ってもいない。
しかし出版社という事業を始めて、
ケチくさい自分にへきえきとしている。
前の会社にいた時のように、思い切ってお金を使えない。
気楽なサラリーマンから一転、
わずかな金額にビビるのである。
「だからやっぱ、好きですよ、お金は。
売りたくなるほど、ほしいです!」
「道端に1円玉が落ちていたら、拾いますか?」
「拾います……。お金、かわいそうだから」
「それでは公衆の水洗トイレの水槽に100円玉が落ちていたら?」
「うーん、どうだろう……………」
僕は即答できなかった。
『拾いたいけど、汚いし……』
「拾わななきゃあ、だめですよ。
拾って、きれいに洗って使ってあげなければ」
お金を救う。
そう、1円玉の時には迷わずそう思えたのだ。
100円玉はちゅうちょした。
だって誰が使っているかわからないトイレだもの、
水の中に手を入れるのはためらわれる。
常識が邪魔をした。
拾われなかった硬貨は下水に流れ、日の目を見ることはないだろう。
「それくらいのことができなくて、お金を愛しているなんていえませんよ」
「……」
「100円の親は500円。
500円の親は1000札ですよ。
その親は1万円札。
子どもが救われれば親はうれしい。
だから親は恩返しするんです」
すごく腑(ふ)に落ちる話だった。
事業の本気をただされたようでもある。
小学生の頃、熱いアスファルトに10円硬貨が何枚も貼りついていた。
一所懸命ほじくり返し、はがせた時にはうれしくてたまらなかった。
その時と同じくらいに、お金を好きになろうと思う。
成功するにはお金がいる。
勝たなければ次のチャンスがない。
やりたい仕事がまだまだ、いっぱいある。
よし、腹をくくって稼ぐぞ!
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【筆者から】
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主にFacebookページ「ジャーナリスト 石川秀樹」に投稿しています。
ミーツ出版(株)という小さな出版社の社長をしています。61歳で行政書士の資格を取り開業しました。さらにこの数年は「ソーシャルメディアを愛する者」としてFacebookで熱く語り続けています。ブログは私の発言のごく一部です。ぜひFacebookページもご覧ください。コメントをいただけたら、こんなにうれしいことはありません。