★悪あがき組にようこそ! 還暦過ぎて2、3年で引退なんてもったいない | ジャーナリスト 石川秀樹

ジャーナリスト 石川秀樹

ちょっと辛口、時どきホロリ……。理性と感情満載、世の常識をうのみにせず、これはと思えばズバッと持論で直球勝負。
3本のブログとFacebook、ツイッターを駆使して情報発信するジャーナリスト。
相続に強い行政書士、「ミーツ出版」社長としても活動中。

ミーツ出版に今朝、手紙が届いた。
見覚えのある銀座・鳩居堂の和紙の封筒、達筆な堂々としたペン字。
旧友のEさんからのものとすぐ分かった。


先日、わが社をわざわざ訪ねてくれた。
Eさんは共同通信社の元編集局長。
サラリーマン人生の晩年には社団共同通信の役員を務めると同時に、不正献金疑惑で悪名を馳せたN建設のコンプライアンス委員長も引き受けていた。
社団は6月で退任。
手紙にはその後の近況が綴られていた。
お元気な様子で、安心した。


2人で久方ぶりに会話した時、Eさんは
「退社したら会社を興し長男や家内の事業を手伝いたい」と話していた。
「それもいいけれど、もったいないですね」
と僕は余計な一言を加えた。
記者・ジャーナリストとしての経験に加え、幅広い人脈を持ち、
組織の管理者としても実績を残している。
企業の行儀が問われている時代、コンプライアンス委員会を持つ会社も少なくない。
その中で、なぜEさんに火中の栗を拾う役回りがめぐってきたのか。
彼が社会部記者としてならし、その間に談合の実態、政治家と癒着のあれこれを見、
一方で、通信社の幹部として政治の世界も知り、広く一般企業の幹部とも交流をもつ
というキャリアがあったからだ。


コンプライアンス委の長は、社内なら総務系か社長室・企画室系のエリートが多いだろうか。
社外の人を充てるならたいていは法曹系。
N建設のような会社(地方の土建屋に見られがちだが業界の大手企業である)に
杓子定規に法律を説くだけでは説得力を持たない。
業界の裏も表も分かり、かつ社会の常識を知った人間が”業界の常識”に浸かっている会社に”社会の常識”を翻訳して伝えてあげる必要がある。
その点、Eさんは適役であった。


この仕事、社団共同通信トップの当職(あてしょく)として与えられたわけではない。
Eさんのキャリアあってのお役目だった。


サラリーマン廃業。
一線からサッと引いて後は悠々自適というのも潔くてよいが、
新聞社や通信社にいるような偏屈者は往生際が悪くて当たり前である。
世間を食って生きてきた分だけ、次のステージでは社会のお役に立つ仕事を、
と考えるのは悪くない。


そこで僕は言ったものだ。
「一般社団法人をつくってコンブライアンスのお手伝いをしたり、社外取締役を務めたらどうですか」


あれから1カ月とちょっと。
Eさんは真剣に社団のことを考え始めているようである。
還暦を2、3年過ぎたばかりで「役割終了!」ではさみしくって仕方ない。
僕としては「悪あがき組にようこそ!!」と言いたいところだ。




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