「男の話」の部分は1,2で終わらせ
早く「バーテンダーの話」に持っていこうという
意識が働き1回の記事に収まるよう余分と思われる
箇所を何行も省き載せた所、もう1つ伝わりにくい
文になってしまったと、いろんな人から指摘され
自分でもそう感じていたので、削除した箇所を復活
及び訂正し書き直しました。
また、読みやすいように行間隔を空けていましたが
そうするとまた2回か3回に分けて載せるようにな
るため訂正記事は行を狭め載せます。
出来たらこの訂正版読んで下さい♪
第2章 男の話2
「約束の日このお店で昔描いた作品と最近の作品を
持って彼女に見せました。
彼女と親しくなれるチャンスです。
尊敬の眼差しで見られるかもしれません。
そんなことを期待しながら見せたのですが・・・。
観終わると実に手厳しい言葉が返ってきました。
以前の絵には1枚1枚の作品に真心が感じられる
から荒削りでも観る人を引きつける何かがあるが
・・・最近の作品はただ綺麗、上手い・・・
それだけだと言われました。
口惜しかった・・・自分でも感じていたことなので
それを簡単に見抜かれ、さらっと言われて・・・」
男はそういって苦笑いを浮かべた。
「才能は努力だけでは補えないもの・・・でも
その才能を貴方は持っているのだからもっと真摯に
絵と向き合いましょ♪
その言い方には厭味はなく、自分の姉か母にでも
いわれているような感覚でした。
よし!頑張ってこの女性をいい意味で見返して
やろうという気になり俄然闘志に火が付いたのを
覚えています。
その日から絵を夢中で描き続けました。
作品が完成する度に彼女に見せました。
一昨日より昨日昨日より今日、彼女は作品を観るたび
褒めてくれて僕にやる気を起こさせてくれました。
そんな関係と並行するように2人の仲も急速に接近し
いつしか恋人関係にもなっていました。
キャリオカでもマスターはじめ常連客の間では2人
の仲は公然の事実として優しく接してくれました。
そしていつしかこの一番奥の席が僕で隣が彼女の指定
席に何となくそうなっていました。
2人で記念日も決めました。
初めてこの席に座って初めて会話を交わした日・・・
10月1日・・・そう、今日です」
カウンターの表面を軽く擦るような動作をしながら
男は当時を振り返っているようだ。
「同棲はしませんでしたが週に3,4回は彼女も
僕のアパートに来て食事や洗濯をしてくれ、まるで
新婚生活のような幸せな日々が続いていました。
2人でよく旅行にも行きました。
ある時、信州のなだらかな丘の上にある
ワイナリーに行った時のことです。
そこのソムリエの人と仲良くなりワインの説明を
聞きながら赤・白と飲んでいました
最後にロゼを注ぎながらソムリエが言いました。
『昔、南フランスで幼馴染の男女が小高い丘の上で
このロゼをかざしそこに映り込んだ街並を
2人で見ながら乾杯をしたら結ばれたという
古い言伝えがあります。
その時からロゼは、愛の酒と呼ばれています』
この日から彼女はロゼを飲むようになりました。
いつか結ばれるかな♪と楽しそうに言いながら・・・」
そう言って男はその時の情景を思い浮かべた。
良いお話ですねとバーテンダーが言った。
男は無言で頷いた。
「知り合って2年程経った頃でしょうか・・・
僕にも転機が訪れました。
恩師からの紹介でパリの日本人学校の美術講師を
しないかという誘いでした。
毎日ではないから空いている時間に絵の勉強をすれば
一石二鳥だろうと言われ、行く決心をしました。
この頃には彼女の影響もあり、画家としての自信も
芽生え始めていた頃です。
彼女も喜んでくれました。
暮らし的には楽ではないけれど、出来れば一緒に
行ってほしいと言うとしばらく考えていましたが
うなずいてくれました。
彼女とは当日、成田空港で落ち合うことにしました。
一抹の不安はありました。
以前から彼女は何も言いませんが、僕の耳には彼女の
両親が貧乏画家との交際を快く思っていないことは
知っていました。
彼女の親の反対で来られないことになりはしないか・・・
不安を口にすると、真剣な表情で
例え反対されようとどんな事が起ころうと必ず来ると
彼女は力強く言ってくれました。
でも・・・
彼女はとうとう現れませんでした・・・・・・」
男はそこまで話すと
グラスのマティーニをグイッと飲み乾し
すぐにチェーサーを流し込んで
フゥーッと、ため息をついた。
そして、また話し始めた。
「僕は彼女が来るまでずっとここで待ち続けようかと
思いましたが、気まぐれ旅行ではないので
そんなわけにもいかず、ひとりパリに向かいました。
機中でも色々なことを考えていました。
ひょっとしたら事故にでも遭ったのではないか?
それとも親の猛反対に屈してしまったのか?
不安と心配と苛立ちの道中でした。
少し落ち着いた頃手紙を書きました。
でも返事は来ません・・・
何度も何度も書き続けました。
そして2ヶ月ほど過ぎた頃やっと1通の
返書が届きました。
約束を破ってごめんなさいという内容と
事情があってこれから先もそちらには行けませんが
日本から応援しています・・・こんな内容の手紙でした。
納得いかない僕はその後も手紙を送り続けました。
そして、1年近く経った時・・・
ショックな返書が届きました。
親の勧めで、ある人と結婚することになりました。
ごめんなさい!
・・・だからもう、手紙を送らないで下さい。
立派な画家になることを祈っています。
そして陰ながら応援しています。
さようなら・・・・・・。
なんなんだ!・・・手紙を破り捨てようと思いました。
悔しさと悲しさで涙が溢れてきました・・・。
今すぐ日本に戻って直接本心を聞きたい・・・。
何度そう思ったことか・・・
無気力な日々が続きました
何もかも投げ出したい・・・」
男はひと息つき、また話し始めた。
「どう考えても納得できませんでした。
何があったにせよ、こんな簡単に愛って壊れてしまう
ものなのか・・・相思相愛だと思っていたのは
僕だけだったのか・・・しばらくは彼女を恨みました。
そしてそんな彼女を見返してやりたい・・・
僕はその一心でその後、絵を描き続けました」
今考えると恥ずかしいです。
男はそう言いながらマティーニを口にした。
「時の経過と共に少しずつ考えも変わりました。
少なくともパリに出発する以前の2人の愛は
本物だったはず・・・だと思っています。
だから、余程の事情が彼女に起こったのでしょう。
そして・・・別れる決心をしなければならなかった。
結婚も含めそれが彼女の望む決断なら尊重しなければ
いけない・・・そう思うようになりました。
勿論そういう考えになるまでには多少時間は
必要でしたが・・・苦笑
自信をなくし希望を失いかけていた時、突然目の前に
その希望と共に現れ、僕を叱咤激励し自信を与えてく
れ、成長させてくれたのは・・・彼女でしたし
曲りなりにも世界で認められる画家になれたのも
全て彼女との出会いがあったからだと思っています。
そして僕の大事な人生の道標を残してくれて・・・
僕の前から去って行った・・・
最近はそんなロマンチックに彼女との出会いを
考えるようにしています」
そう言いながら男はバーテンダーに笑いかけた。
「僕も色々な事情で1ケ月ほど前に日本に帰って
来ましたが、ここキャリオカに来ることには
迷いがありました。
ここには彼女との思い出がありすぎるのです。
行くのは止めようと一旦は決意したのですが
でも・・・導かれるように来てしまいました」
でも来てよかった・・・独り言のように男は言った。
「人生、予期せぬアクシデントや他人には理解
できない事情があるものですね・・・」
そう言ながらバーテンダーは言葉を続けた。
「今度は私の話を聞いていただけますか・・・
どうしてもお伝えしたいのです・・・」
「・・・・・・聞かせてください・・・」
男は言った。
第3章 バーテンダーの話につづく