春が来るまで休もう | 『イラスト日記』

春が来るまで休もう

孤独でお調子者のクマがいました。


今日もサルから、

「君は穴を掘るのが上手だね。一度名人芸を見せてよ。」

と言われました。


クマはホントは掘りたくもなかったんだけど、

サルに認められたい一心で、

喜んでるふりをしながら穴を掘りました。


掘り上げた土がみるみるうちに

山のように積み上げられていきました。


疲れたクマは、「もういいだろう」と思い、

サルを見ました。


ところがサルは、

「残念だな、そんなんじゃモグラの方がもっとすごいよ。」

と言いました。


するとクマは、

「あんな小さなモグラに負けるもんか」と、

前にも増して、深い深い穴を掘り出しました。

毎日毎日、自分に無理をして掘り続けて、

「これなら誉めてくれるだろう」と思いました。


そこで、

「これでどうだい?」と言ったのですが…

返事がありません。

耳をすましてみると、

地上の音がまったく聞こえないのです。


クマは急に不安になって、

穴からはい上がろうとしました。

しかし、あまりにも深く穴を掘り過ぎてしまったため、

穴から出られなくなりました。


そして、クマは、

本当に出られなくなったと知ったとき初めて、

『サルの言葉に踊らされるこわさ』を知ったんです。


「認められたい」という欲求さえなければ、

こんな事にならなかったのにと…

クマは悔やみました。


そう思った時に、どっと疲れが出て、

クマは生きる気力を失いました。

でも、

助けてくれる人はもう誰もいませんでした。




生きる事に疲れてしまった人は真面目な人です。


『認めてもらいたい』と思って、

頑張って生きてきた人です。

自分は無理をしてるって気付かず、

がむしゃらに生きてきた人です。


必死で努力してきた人です。


努力してる時に、

まさか自分がこのクマの様になるなんて…

予想もしてなかった。


自分の努力は、

いつか報われると思ってた。


いつか皆から賞賛されると思ってた。



『この人生にはきっと何かあるだろう』


そう思って一生懸命生きてきたのに…

気がついたら、生きる事に疲れてた。







僕は思います。


春が来るまで休もう。


静かな穴の中で、ゆっくり休んで…

次の幸せの準備をしよう。


穴を掘ってた時間は、

『人間の愚かさ』なるものを、

学ぶためにあった時間だったんだ。



いまは休もう。




もしも…


この必要で不可欠な休息の時間を、

この必死で掘りあげた静かな穴を、


蔑み、あざけ笑うサルがいたとしたら…



僕は絶対許さない。