和を以て貴しと為す
わしは長尾景虎(ながおかげとら)です。
ビューッ!!
上杉憲実(うえすぎのりざね)らは足利荘(あしかがのしょう)を見回り、帰途の途中に矢に襲われた。
憲実「何だ!?」
ザクッ!!
景仲「ぐわっ!」
憲実の家臣、長尾景仲(ながおかげなか)の腕に矢が刺さったのだ。
憲実「何奴だ!!?」
憲実が大声で叫ぶと憲実に付いていた家臣らが憲実の周りを囲み、一部の家臣らは矢が飛んできた方向に向かって行った。
こんな場合、連れている兵の数は多くはないよね
憲実「景仲、大丈夫か?」
景仲「これしき、大丈夫です。」
すると、憲実の忍び、平太(へいた)が、
平太「殿(憲実のこと)、奴らの正体を調べてまいります。殿は先に居館にお戻りください!」
そう言うと走り去っていった。
憲実らは板鼻の守護所に無事戻った。
そして憲実は守護所を敵襲に備えて守備を固めた。
夜遅くになり、平太が戻ってきた。
憲実「平太、よくぞ無事戻った。」
平太「お言葉、ありがとうございます。先ほどの賊ですが…」
景仲「誰であった?」
平太「はっきりとした正体はわかりませぬが常陸国(ひたちのくに)の方向に逃げて行きました。」
憲実「常陸?」
景仲「…常陸と言えば、まさか…小栗(おぐり)の手のものではなかろうか?」
平太「わしもそう思います。」
憲実「小栗とは…小栗満重(おぐりみつしげ)のことか?」
景仲「満重は先の上杉禅秀の乱(うえすぎぜんしゅうのらん)では禅秀方に付きましたが、それ以前から持氏(もちうじ)様に反抗的で、持氏様に所領を取り上げられてます。」
平太「満重は兵を集めていると聞きました。それが上野や下野にまで密かに広げているとは…」
憲実「うむ〜、これは戦を仕掛けてくると考えられる。持氏様に報せねばなるまい。景仲、持氏様に報せよ。」
景仲「はい。」
景仲は持氏に報せる手配を取った。
景仲には心配があった。
景仲「殿(憲実のこと)…満重は京の将軍、足利義持(あしかがよしもち)様と直接主従関係を結ぶ京都扶持衆(きょうとふちしゅう)と聞いております。」
京都扶持衆って京の幕府が鎌倉府を牽制するために関東や東北で鎌倉府と対立している有力武士と主従関係を結んだ者なんだよ
憲実「なんと…ならば京からの命があるのでは?」
景仲「わかりませぬが…それがあれば鎌倉と京との戦に発展する可能性もありまするが、満重の持氏様嫌いは以前よりですから、京とは関係ないやもしれませぬ。」
憲実「よし、我らも明日の朝には鎌倉に向かう。」
憲実が襲われた報せを聞いた持氏は、
持氏「関東管領を襲うとは!!満重め!!」
つづく…







