和を以て貴しと為す
わしは長尾景虎(ながおかげとら)です。
足利庄から上杉憲実(うえすぎのりざね)は足利持氏(あしかがもちうじ)に会うべく公方御所を訪れた。
そこには持氏の側近、一色直兼(いっしきなおかね)もいた。
直兼さんは憲実さんの奥さんのお父さんなんだ。
憲実「公方様(持氏のこと)、ただいま戻りました。」
持氏「足利庄での学びの場は進んでおるか?」
憲実「はい、公方様のおかげにございます。」
持氏は穏やかな表情から苦渋の表情に変わった。
持氏「…ところで、京での将軍家のことは聞いておるか?」
憲実「はい、大御所様(義持のこと)がお亡くなりになり、義円(ぎえん)様が後継ぎになったと…」
直兼「籤引きで後継ぎを決めたのだぞ!」
憲実「聞いておりまする。還俗して名を義宣(よしのぶ)様と改めたと。」
持氏「籤引きには、わしは最初から外され、義持(よしもち)公の弟のみから選ばれたそうだ。」
直兼「公方様ほどの実力者が外されるとは…ありえぬ!憲実、そなたは義持公は後継ぎのことで公方様のことを胸に留めておくと申したと言っていたではないか!?あれは偽りか!?」
憲実「これは尋問ですか!?」
バンッ!!
持氏は床を叩いた。
持氏「直兼!!黙れ!」
直兼「ハッ!」
持氏「直兼、下がれ。」
直兼は怯えた様子で頭を下げ、居間から出ていった。
持氏「憲実…思うところを述べよ。」
憲実「ありがとうございます。…大御所様が申したことは偽りはごさいませぬ。ただ大御所様は誰が後を継いでも諸大名が支えねば選ぶ意味がない、それで後継ぎを選ばなかったと…」
持氏「うむ…京は合議制となっておる。義持公も苦労されたのだろう。」
憲実「籤引きで決めたのは諸大名の意見にございます。」
持氏「京の幕閣が政を動かすのか…憲実、大義であった。下がってよいぞ。」
憲実は公方御所を後にしたが、持氏の表情に納得いかぬと見えた。
憲実『よからぬことを考えねばよいが…しばらくは鎌倉に居よう。』
義宣は還俗したばかりと言うことがあり、すぐには将軍宣下はされなかった。
足利義宣
義宣さんは幼い頃に出家したから元服をしてないんだ。それで還俗しても子供扱いだから、還俗したあと髪が生えてから元服して官位を授けられたんだよ
京では義宣の将軍宣下がないことから持氏が将軍となるのではと流言され不穏な空気になった。
そして応永35年(1428年)4月27日、長く続いた応永の元号は改められ正長となった…。
つづく…









