和を以て貴しと為す
わしは長尾景虎(ながおかげとら)です。
荒々しく入ってきた武将は孔雀丸(くじゃくまる)を見下ろした。
孔雀丸は平伏し、
孔雀丸「越後守護、上杉房方(うえすぎふさかた)が三男、孔雀丸にございます。」
「足利持氏(あしかがもちうじ)じゃ」
持氏は座り、
持氏「孔雀丸、待っておったぞ。」
孔雀丸「此度、亡き関東管領、上杉憲基(うえすぎのりもと)様の後を継ぐことになり、持氏様にお仕えすることになりました。」
持氏「うむ、憲基はわしに尽くしてくれた。孔雀丸も頼むぞ。」
孔雀丸「はい」
持氏「景仲(かげなか)、孔雀丸は元服はまだか?」
孔雀丸の後ろに控えていた長尾景仲(ながおかげなか)が、
景仲「すぐに元服となります。名は房方様から預かっております。」
持氏「ほぉ、名は何とするのだ?」
景仲は房方から預かっていた元服名を広げた。
憲
実
孔雀丸「のりざね…上杉憲実。」
持氏「憲は山内上杉家の通字であるな。憲実、良い名であるな。」
景仲「ありがとうございます。」
持氏「よし、憲実。元服したのはいえ、そなたはまだ幼い。しばらくはわしが補佐しよう。」
孔雀丸改め憲実「これはありがとうございます。持氏様より学びます。」
この時、憲実さんはまだ10歳。持氏は20歳を超えていたのかな。かなり離れてるね
持氏「うむ、早速、わしがそなたに弓を教えてやろう。」
そう言うと持氏は憲実を庭に連れて弓矢の稽古をし始めたのです。
この様子を見てる景仲はため息をついた。
憲実の鎌倉入りしたことは京の将軍、足利義持(あしかがもちうじ)も知るところになった。
足利義持
義持さんは上杉禅秀の乱(うえすぎぜんしゅうのらん)に共謀した異母弟の足利義嗣(あしかがよしつぐ)さんを幽閉した上で殺害した後くらいなんだ
義持は憲実の鎌倉入りのことを畠山満家(はたけやまみついえ)から聞いていた。
満家「越後の房方から報せが来ました。子の憲実が関東管領になると…」
義持「うむ、こちらからの命も通じるようにしてるな?」
満家「はい、間者を付けていますゆえ、鎌倉の
様子はわかります。」
義持「今は泳がしているが、持氏の思うままにしてはならぬ。」
そう言うと、義持は大きく息を吐いた…。
つづく…






