前回まではこちら⬇️
八代は豊後の目代の家臣で為朝さんを付け狙っていたんだよね
太助(たすけ)や家遠(いえとお)ら為朝の家臣らは片付けに勤しんでいました。
太助「やっと八代を討ち取りましたな。」
家遠「さすが殿(為朝のこと)、矢が見事に撃ち抜きました。」
それを聞いて為朝は、
為朝「いや…八代を撃ち抜いた矢は我ではない。」
家遠「えっ…殿でなければ、誰が…?」
為朝「宴の時にいた老人の姿を見た。あの老人がやったのだと思う。」
太助「まさか…年老いて、あれだけの威力のある矢を放てますか?」
そこへ定吉(さだきち)が、
定吉「あの老人は天狗ですよ!」
為朝「天狗?」
太助「天狗が何のために我らに味方したのだ?」
定吉「わかりませぬが…」
その場にいたものは一同茫然としたのです。
片付けが終わり、為朝は数人の家臣に見張りを命じました。
夜討されたから、それに備えたんだよね
為朝は寝付けず、夜明けの空を眺めていました。
為朝『あの老人…我の慢心を戒めたのだろう』
そこへ百合(ゆり)が来ました。
百合「八郎、眠れないの?」
為朝「夜討されて皆驚いたであろう。」
百合「ううん…私は八郎が守ってくれると思っていたから。」
為朝「我は慢心していた。強い矢を引き、勝ち続けて、いい気になっていた。それを老人が戒めてくれたのだろう。」
百合は為朝の話をジッと聞いていました。
為朝「夜討された時、我は酒に酔っていた。だから矢が当たらず苦戦した。八代を撃ち抜いたのは、我の矢ではない。我の慢心を老人は見抜いていたのだろう。」
百合は微笑んで、
百合「でも八郎は慢心していたことを今、反省して見張りもつけてるわ。自らを素直に認めていると思うわ。私はそんな八郎が好きだわ。」
為朝は百合の言葉に驚き…
為朝「百合…ありがとう。」
為朝は百合を抱き寄せ、口づけをしたのです…
つづく…
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