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天下を競望せず…
わしは吉川元春(きっかわもとはる)の三男、広家(ひろいえ)です。
「元春が出陣するのか!?」
大阪城に秀吉(ひでよし)の声が響いた。
秀吉は毛利(もうり)の安芸国から戻ってきた黒田官兵衛(くろだかんべえ)と会っていた。
官兵衛「はい、元春殿自身が出陣すると返答されました。」
秀吉「元春と会ったのか?」
官兵衛「郡山城に来ていました。」
秀吉「そうか。では、わしも早く九州に行かねばならぬの〜」
官兵衛「まずは毛利と大友(おおとも)が先陣となりましょう。殿(秀吉のこと)はゆるりと九州においでくださいませ。」
秀吉「徳川家康(とくがわいえやす)との問題が解決すれば、すぐにわしは出陣するぞ。」
この頃、秀吉は家康に自らの妹・朝日姫(あさひひめ)を嫁がせ、この後には自らの母・大政所(おおまんどころ)を人質に出すなど、なんとか家康を臣下におこうとしていた。
一方、元春は日野山城(ひのやまじょう)麓の建設中の館に戻り、出陣の準備をしていた。
経言(つねのぶ、後の広家)は元春がなぜ今回は出陣を決めたのか、疑問だった。
経言「父上(元春のこと)、家中では今まで大友と争っていたのに、その大友を助けることは納得がいかぬと騒いでおりまする。」
元春「経言、家中を鎮めよ。これも時代の流れだとな。天下平定のためには受けねばならぬこともあるのだ。」
経言「…だから父上は秀吉様の出陣令を受けたのですか?」
元春は手を止め、経言の顔をジッと見た。
元春「此度はわしと秀吉との戦なのだ。」
経言「戦?秀吉様と戦うのですか?」
元春「馬鹿者、兵を率いて戦うのではない。秀吉はわしを屈服させたいのだ…まぁ、見ておれ。わしは勝ってみせる。」
経言は元春のことが心配になっていた。
そこへ元春の正室、優(ゆう)が来た。
優「殿、出陣の準備は進んでいますか?」
元春「うむ…経言、ここは外せ。」
経言は席を外した。
元春「準備は進んでおる…優、此度がわしの最後の出陣となる。戦が終われば、2人でゆるりと過ごしていこう。」
優「はい。殿に嫁いで長年、戦に出られて、ようやくゆるりと出来る日が来ましたね。」
元春は優の手を握り、
元春「すまぬの。長年尽くしてくれて感謝しておる。」
優「はい、立派に戦ってくだされ。」
既に優には元春の異変を感じていたのだった。
天正14年(1586年)8月、元春は九州に向けて出陣した。
これが最後の出陣となるのである…
つづく…
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