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天下を競望せず…
わしは吉川元春(きっかわもとはる)の三男、広家(ひろいえ)です。
「出陣じゃ〜!!」
天文24年(1555年)10月1日、卯の刻(6時)
厳島に毛利元就(もうりもとなり)が声が上げ、一斉に鬨の声が響いた。
鬨の声って戦の時に勝ち鬨や戦場で上げる声なんだ。士気を上げるため、みんなで一緒に声を上げるんだよ
「おおぉ!!」
毛利軍は陶(すえ)軍の背後の紅葉谷を一斉に駆け降りた。
先陣は元春の吉川隊である。
吉川隊は塔の岡の陶軍を見つけ、
元春「陶軍見たり!皆の者!かかれ!!」
いきなりの出来事に陶軍の兵は大混乱。
「うわぁ!」
「なんだ、なんだ!」
「敵だ!」
陶晴賢(すえはるかた)は驚き、
晴賢「どこの軍勢か⁉︎」
家臣の三浦房清(みうらふさきよ)が来て、
房清「殿!毛利の本隊でこざいます。お逃げくだされ!」
晴賢「何をいうか⁉︎ 蹴散らせ!」
そこへ元春が雪崩れ込んできた。
元春「陶殿!見つけたり!」
晴賢「元春!小童が!かかってこい!」
ガチッ!!
2人は太刀を激しく合わせた。そして元春は晴賢を倒しにかかった。
晴賢「くっ!小童め!成長しおったな!」
元春「陶殿に勝つために精進したゆえ!」
その時、陶軍の弘中隆包(ひろなかたかかね)が割って入ってきた。
隆包「陶殿!我が具は混乱しております!ここは、わしに任せて逃げてくだされ!皆、陶殿をお連れしろ!」
晴賢「何をする⁉︎ 戦うのじゃ!!」
晴賢は隆包の兵に連れられて逃げていった。
元春「追え!陶を追うのじゃ!!」
毛利本軍、吉川隊の動きを見て敵中にいた小早川隆景(こばやかわたかかげ)の小早川隊は宮尾城(みやおじょう)の兵と合流し、陶軍のいる塔の岡に駆け上がっていった。
隆景「吉川隊に遅れをとるな!かかれ!!」
一方、沖合で待機していた村上水軍が動き出した。
能島村上氏(のしまむらかみし)の村上武吉(むらかみたけよし)は、
武吉「やるの、毛利!我らの戦も見せやる。陶軍にかかれ!」
村上水軍は次々と陶軍の船を沈めていったのだ。
陶軍の兵は狼狽し我先に逃げて、陣を立て直しようがなかった。
西に向かって逃げる晴賢を吉川隊が追撃したが、それを阻止しようと弘中隆包率いる500の兵が立ちはがったのだ…
つづく…
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