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天下を競望せず…
わしは吉川元春(きっかわもとはる)の三男、広家(ひろいえ)です。
「…馬鹿者!!」
毛利元就(もうりもとなり)の怒鳴り声が吉田郡山城(よしだこおりやまじょう)に響いた。
怒鳴られているのは元春であった。
元春「父上!」
元就「自分勝手に嫁取りを決めてくるとは、何事か!?」
元春「わしの嫁です!嫁取りはわし自身で決めとうございます!」
元春は怒鳴られても一歩も引かなかった。
そこへ家臣の児玉就忠(こだまなりただ)が割って入ってきた。
就忠「元春様…先方は今、来られてるのですか?」
元春「いや、連れてこようと思ったが信直(のぶなお)殿がまずは父上にお赦しを得てからと言うので。」
元就「熊谷殿は筋を通してこいと言いたかったのであろう。」
就忠「元春様、お言葉ですが、優殿は近隣に響いた不美人…それでもよろしいのですか?」
元春「わしは優殿、全てを惚れたのだ。それに毛利と熊谷の絆も強くなろう。信直殿は強者、毛利の心強い味方になるのだ。」
元就「全くお前は……ふっ、はははははっ!」
元就は大笑いした。
元就「お前は犬っころのように勝手に飛び出しおって。だが、そこまでの気持ちがあるのなら、それもよかろう。」
元春「父上!ありがとうございます!」
元就「就忠、わしは信直殿宛てに文を書く。それを届けてくれ。」
元就は早速、文を書き信直のところへ送ったのだ。
信直はその文を読んだ。
『熊谷殿、我が息子、元春が結婚を申し込んだことを親密に受けてめて下さった事。犬っころのように勝手に飛び出す奴ですが、元春が熊谷殿の館で申し上げたのであれば、今更反対も何もできませぬ。
親の知らぬ間に勝手に結婚を申し込むなど非常識極まりないことで私の面目は丸潰れです。
しかし、熊谷殿が思案されたこと、私も結婚には賛成です。本来ならお互い顔を合わせて話し合うことなのでしょうが、今更申す事もないでしょう。
ただただ元春にお力添え頂いて、この結婚がまとまるように万全を期すことができるよう覚悟します。』
信直はフッと笑って、
信直「優、元春殿に尽くすのだぞ。」
優「はい、父上、ありがとうございます。」
優はニコッと笑った。
その後、元春は優を元就に会わせた。
こうして我が父・元春と母・優は結婚したのだ。
元就は亡き妻、美し(よし)の墓前に元春の結婚を報せていた。
その時…
「殿…吉川経世(きっかわつねよ)殿より書状を預かって参りました。」
文を持ってきたのは毛利の忍び、世鬼政時(せきまさとき)である。元就は書状に目を通した。
元就「…いよいよ吉川に手をかける。」
つづく…
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