世は争乱…
我は室町幕府、第9代征夷大将軍・足利義尚(あしかがよしひさ)である。
我が母、日野富子(ひのとみこ)の居る小川御所を出た細川政元(ほそかわまさもと)と紗奈(さな)は我の居る伊勢貞宗(いせさだむね)邸に向かった。
政元は富子の命にて我に会いに向かっていたのだ。
政元「御所様は御台様(富子のこと)、大御所様(足利義政〔あしかがよしまさ〕のこと)と仲違いし、家族はバラバラだ…後継ぎがいても、この有様では妻を持つことに疑問を感じる…。」
紗奈「はい…されど殿は今のままでは、細川の御家が成り立ちませぬ。」
政元「わしはそなたがいれば、それでよい。わしはそなたが傍にずっといてくれればいいのだ。」
紗奈「…私は殿の乳母であり、忍びであります。」
政元「御台様はわしが女を知らぬと思っているようだが…わしの女は紗奈だけだ。」
政元は紗奈の手を握りしめた。
政元と紗奈はすでに男と女の関係にもなっていたのだ。
乳母と男女の関係になったのは義政さんと、その乳母、今参局(いままいりのつぼね)もそうらしいよ
この頃、我の奉公衆と父・義政の奉行衆が武力衝突をするほど揉めていたのだ。
奉公衆って将軍直属の武官部隊で奉行衆は文官の集団なんだ
我と義政の仲は最悪な状態だったのだ。
義尚「政元、よう来たな。」
政元「何やら物々しいようで。」
義尚「父の奉行衆が攻めてくるかもしれんから、備えておるのだ。」
政元「御所様…家族で揉めておる時ではありませぬぞ。御台様とも仲直りしなされ。」
義尚「おっ、我を説教しにきたのか?母上に言われてきたのか?」
政元「揺るぎない将軍家でなければ、京は荒れまする。それを申しておるのでございます。」
我はこの頃、酒を手元に置くことが常になっていた。
義尚「…政元、我は本当に将軍なのか?今だに父が政務から離れようとはせぬ。大名も父にお伺いを立てる…我は何なのだ⁉︎」
政元「……御所様、わしも一杯頂きます。」
政元は一気に飲み干した。
政元「わしには父はおりませぬ。父と争うことも学ぶこともできませぬ。御所様には御父上も御母上もおりまする。話すこともできまする…うらやましく思います。」
義尚「……」
政元「大御所様のやり方を真似する必要はありませぬが…大御所様のやり方を見る必要はあります。」
義尚「…わかった。」
我にとって政元は信用できる人物であった。
翌年、文明18年(1486年)義政は改めて政務から引退することを表明したのだ。
この頃、我や政元を動かす争いが起き始めていた。
それは京から離れた近江の地だった…。
つづく…
次回をお楽しみに〜
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