諸行無常の世の中…
我は北条泰時(ほうじょうやすとき)が妹、竹子(たけこ)です。
源実朝(みなもとのさねとも)様が望んだ渡宋は建造した船が浜辺から動かすことが出来ず、失敗に終わりました。
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見物に来ていた人々は帰り、実朝様はただ渡宋船を見つめていました。
夕日が落ちる時になり、泰時が実朝様に声をかけました。
泰時「鎌倉殿(実朝様のこと)…冷えてきました。もう御所へ戻りましょう。」
実朝「泰時…私は宋に行きたかった。」
泰時「それは…なりませぬ。鎌倉殿が鎌倉を空けるなど。」
実朝「宋に行き、宋の政(まつりごと)を学びたかった。そして誰にも負けぬ政で鎌倉を、武士の世を治めたかったのだ…。」
泰時「それが、鎌倉殿の答えだったのですか…」
実朝「そうだ。我が父、頼朝(よりとも)は朝廷を超える力を入れようとしたと、そなたが申した。私には鎌倉に居るより宋で力を手に入れたかったのだ。…無念だ。」
泰時「…いずれ、宋に行きましょう。私が鎌倉殿を宋にお連れします。いずれ…」
実朝様は泰時の言葉に、微笑みを見せ、御所に帰っていきました。
実朝様が去った由比ヶ浜に陳和卿(ちんわけい)が残っていました。
泰時は陳の元に行き…
泰時「そなた…鎌倉から去るのだ。」
陳「なっ、何を申す?」
泰時「そなたの目的は何だ?なぜ鎌倉殿に近づいた?」
陳「鎌倉殿は我が前世の師で…」
カチッ
泰時は陳が言うのが終わらぬうちに太刀を抜こうとしていたのです。
泰時「誰に頼まれたのかは知らぬが…命が欲しくば、二度と鎌倉には来るな!」
陳「ヒヒィ〜」
陳は慌てて逃げていきました。
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泰時は秘密裏に渡宋船に細工を施して動かぬようにしていたのです。
海に浮かぶことなく、建造された渡宋船はその後、由比ヶ浜の浜辺で朽ちていったのでした。
1217年夏になり、鎌倉に1人の僧が帰ってきました。
それは西国の園城寺(おんじょうじ)で修行を終えた公暁(くぎょう)でした。
そう…実朝様の兄、頼家(よりいえ)様の遺児、公暁が鎌倉に帰ってきたのです…。
つづく…
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