諸行無常の世の中…
我は北条泰時(ほうじょうやすとき)が妹、竹子(たけこ)です。
「わしは足利義兼(あしかがよしかね)が長男、義純(よしずみ)です。」
泰時らは旅先の足利荘(あしかがのしょう)で足利義純…いや畠山義純(はたけやまよしずみ)に会ったのです。
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泰時「義純殿は畠山家を継いだと聞きました。」
義純「よくご存知で」
泰時「我らは旅をする者、鎌倉にも行き、そのことを知りました。」
義純「そうですか、わしは畠山を継ぐつもりはなかったのですが…鎌倉の命には逆らえませぬ。」
泰時と一緒にいた家臣の尾藤弥助(びとうやすけ)と長崎次郎(ながさきじろう)は自分たちの正体がバレないかヒヤヒヤしながら聞いていました。
義純「わしには先に妻がいたのです。」
泰時「なんと⁉︎ そのお方は…?」
義純「足利と同じ源氏(げんじ)の新田(にった)の娘でした。しかし…畠山殿の未亡人を妻に迎えるため…離縁しました。」
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義純「畠山重忠殿の未亡人は執権、北条義時(ほうじょうよしとき)や尼御前、政子(まさこ)様の妹御。断ることはできません…」
泰時はこの事実までは知りませんでした。
泰時「義純殿は鎌倉をお恨みですか?」
義純「いや、今の鎌倉殿は我ら源氏の嫡流。支えていかねばなりませぬ。ただ…」
泰時「ただ?」
義純「北条の勝手にはさせぬようにせねばと思っておりまする。」
弥助と次郎が密かに懐に手を入れ、動こうとしましたが泰時は目を見て止めました。
泰時「これからどちらへ?」
義純「畠山の本領、武蔵国に向かいます。」
泰時「此度はありがとうございます。道中お気をつけて…」
泰時らは義純を見送りました。
弥助「我が北条のことを悪く言われましたぞ。」
泰時「よい、義純殿や新田の娘にしてみれば断腸の思いだろう。しかし、鎌倉を守る決意は我らと同じだ。」
泰時は知らぬところで北条の行動が武士を苦しめていることを痛感したのです。
泰時「よし、新田の名が出たらから、次は新田荘(にったのしょう)に行ってみよう。」
次郎「新田荘は上野国(こうずけのくに)。隣の国です。」
泰時らは上野国へ向けて歩き出しました。
上野国、新田荘ではさらに地方武士の辛い思いを見ることになるのです…
つづく…
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