諸行無常の世の中…
我は北条泰時(ほうじょうやすとき)が妹、竹子(たけこ)です。
(泰時はこの時点では頼時(よりとき)と名乗っています。)
1194年も秋になり、源頼朝(みなもとのよりとも)様は上洛の準備を始めました。
頼時は上洛に同行するように頼朝様から言われており、同様に準備を始めていました。
準備をしている頼時に父・義時(よしとき)が会いにきました。
義時「頼時、準備は進んでおるか?」
頼時「はい、準備は鎌倉殿より先に終える予定です。」
義時「此度の上洛、表向きは東大寺の落慶供養だが…本来の目的は大姫(おおひめ)様の入内工作であろう。」
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頼時「父上、ご存知でしたか…。」
義時「うむ。御家人の間では知らないものはいない。入内には批判的なものもいるようだ。」
頼時「批判とは?」
義時「鎌倉殿は東国武士の頂点にいるお方、それがなぜ朝廷に入り込もうとするのか…と。ある者は鎌倉殿は平清盛(たいらのきよもり)と同じになるのか…と言う者もいる。」
平清盛は自らの娘を時の帝の妃とし朝廷で権力を握りました。さらに娘が子を産むとその子を帝とし清盛率いる平家は栄華を極めたのです。
頼時「清盛ら平家は栄華を極めましたが…武士の間での評判はよくなかったですね。」
義時「そうだ。だからこそ、我々東国武士は鎌倉殿と一緒に武士の世を目指して平家に対して挙兵したのだ。なのに、その鎌倉殿が清盛と同じことをしようとは…。」
頼時「まだ入内は決まったわけでは…。」
義時「我が父、時政(ときまさ)や三浦義澄(みうらよしずみ)は鎌倉殿の考えにかなり批判的のようだ。」
頼時「お祖父様が!」
頼時は時政が曾我兄弟(そがきょうだい)を使って頼朝様を暗殺しようとしたことを思い出しました。
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頼時はドロドロとした陰謀を感じていました。
そして翌1195年になり、頼朝様は政子(まさこ)様や大姫様や頼家(よりいえ)様ら家族と頼時ら家臣を連れ上洛の途に着きました。
頼時は何事も無事に終わるように念じていました。
鎌倉では頼時が心配したドロドロとした陰謀が進んでいたのです…。
つづく
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