諸行無常の世の中…
我は北条泰時(ほうじょうやすとき)が妹、竹子(たけこ)です。
1191年、我が父、北条義時(ほうじょうよしとき)は比企朝宗(ひきともむね)の娘、姫の前(ひめのまえ)に惚れてしまい、恋文を書いていました。
しかし、義時は文を書いても姫の前に渡すことができませんでした。
義時の様子に見兼ねた政子(まさこ)様が義時の元に来ました。
政子「義時、その書状は比企の娘に宛てたものですね。」
義時「いや…はい。」
政子「渡さないのですか?」
義時「私には金剛(こんごう、泰時の幼名)がいます。新たに妻を迎えてよいものか……」
政子「金剛のことなら心配ないでしょう。あの子は理解力のある頭の良い子です。それに、比企氏と縁を結ぶことは北条にとっても良いことでしょう。」
義時「比企は姉上と頼朝(よりとも)様の御子、万寿(まんじゅ)様の乳母父になっていますが…」
万寿くんは後の源頼家(みなもとのよりいえ)さんなんだ。
政子「この先を考えて比企と結んでおくことです。比企は比企尼が鎌倉殿(頼朝様のこと)の乳母であったことから鎌倉殿の覚えが良いのです。」
義時「…わかりました。書状を出す前に金剛と話をします。」
義時は金剛を呼びました。
義時「金剛、父は新たに妻を迎えようと思う。そなたにとっては母となる。」
金剛「その方は比企家の姫の前殿ですね。」
義時「なっ、知っていたのか?」
金剛「はい、政子様やお祖父様が話しているのを聞いておりました。」
義時「金剛はどう思う?」
金剛「武家として子を沢山持たねばなりませぬ。それに金剛は兄弟ができれば嬉しゅうございます。」
義時「辛い思いをすることもあるかもしれぬ。」
金剛「私には父上や政子様がいます。辛い思いなどありませぬ。ご心配なされますな。」
義時「金剛、すまぬ」
金剛の理解を得た義時は恋文を姫の前に送りました。
しかし、姫の前は義時が何度も恋文を送り続けても一向になびきませんでした。
それを見兼ねた政子様は頼朝様に相談したのです。
頼朝「義時は我が政治を継ぐ大事な義弟。それはなんとかせねばならぬな。」
頼朝様は姫の前を呼び出し話をしました。
頼朝「義時は我が義弟。それだけでなく我が政治を継げる男だ。この先、我が息子・万寿を支える男なのだ。」
姫の前「……私は…」
頼朝「他に好意を寄せる男がいるのか?」
姫の前「……いえ。義時殿は妻がいたと聞いております。」
頼朝「それは昔のこと。そなたが正室になるのだ。ならば義時に起請文を書かせよう。離縁はせぬと…な。」
起請文って神仏に誓う文書なんだよ。
姫の前「殿がそこまでおっしゃって頂けるのであれば……義時殿に嫁ぎます。」
実は姫の前の本心は頼朝様に向いていたのです。
姫の前は頼朝様への好意を隠し、義時に嫁ぎました。
1192年4月、京で頼朝様の強敵が亡くなりました。
後白河法皇(ごしらかわほうおう)様が崩御されたのです…。
つづく…
次回をお楽しみに〜
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