世は群雄割拠の戦国時代。
わしは北条氏康(ほうじょううじやす)です。
綱成(つなしげ)は塩商人の一行に紛れ、甲斐国の武田信玄(たけだしんげん)の躑躅ヶ崎館(つつじがさきやかた)に入りました。
綱成「これが信玄のいる館か…。」
綱成は商人らと一緒に塩を勝手口に運びました。
ふと見ると館の敷地内に稲が育った田畑があったのです。
綱成は勝手口にいる武田の侍女に尋ねました。
綱成「敷地内に田畑があるとは…いかがされたのですか?」
侍女「御館様の命で敷地を耕し米を作ってます。」
綱成「武家の館で米作りを領主様が命ずるとは…」
侍女「飢饉に備えて、少しでも米を蓄えておこうと御館様は考えてますよ。民だけに負担させくないと言っておりましたから。」
民だけに負担させくない、綱成は我が北条と同じ考えではないかと思いました。
すると、その田畑から稲を運んでくる入道姿の男が見えました。
侍女「これは…御館様。」
侍女や周りのものは平伏しました。綱成も合わせて平伏しました。
信玄「皆、今年は稲がよく育ってくれたぞ。」
侍女「御館様自ら稲刈りとは恐れ入ります。」
信玄「なんの…ん、相模の塩が届いたのだな?」
侍女「はい。この者たちが運んでくれました。」
信玄「おお、相模から大義である。」
綱成は平伏したまま、
綱成「あぁ、お声を頂き、ありがとうございます。」
信玄「気楽にせよ。面をあげてみよ。」
綱成は顔を上げ信玄を見ました。
稲刈りで土に塗れていましたが、とても貫禄のある雰囲気を綱成は感じたのです。
信玄「相模はどうじゃ?民は暮らしやすいかの?」
綱成「相模の北条様は我ら民に気にかけて頂いて、ありがたいことです。」
信玄「ほぉ、越後の上杉が攻めてきて大変ではないか?」
綱成「戦のことはわかりませぬが、我らは大事ありませぬ。なぁ?」
美咲「へぇ。」
信玄は綱成の顔を見て、
信玄「そなた、いい面構えしておるの〜。強者の武将のようじゃな。塩商人にしておくのはもったいないくらいじゃ。」
綱成は一瞬、ドキっとし、平伏しました。
綱成「滅相もないことでございます。わしは怖くてお武家様にはなれませぬ。」
信玄「そうか。もったいないの〜。」
そこへ武田の家臣がやってきました。
家臣「御館様、報せが入りました。あちらへ…。」
信玄「よい。ここで言え。」
家臣「……はっ。北条殿が上総国の三船山(みふねやま)で里見(さとみ)に負けたとのことです。」
綱成「!」
綱成は平伏したまま内心は驚いていたのです…。
つづく…
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