私、足利義満の娘・智子です。
1441年、関東で起こった結城合戦で敗れた足利持氏殿の遺児、春王丸、安王丸は京へ送られました。
私はそれより遅れて京へ向かいました。
その途中、嫌な話を耳にしました。それは兄・義教の命で春王丸、安王丸が斬られたというものです。
義教は持氏殿の一族は根絶やしにすると言っていましたが、その言葉を実行したのです。
京へ向かう途中の美濃国垂井宿で春王丸、安王丸は殺害されたんだ。春王丸が13、安王丸が11の年齢で幼いのに。
私は急いで京へ戻り、義教のいる室町第に入りました。
義教「智子、よく無事で戻った。」
私「兄上、春王丸・安王丸を斬ったのは兄上の命ですか?」
義教「うむ。わしが命じた。生かしておいては後の恨みを生む。また争いが起きないためにも2人は斬るしかないのだ。」
私「あんな幼な子を…。」
義教「よいか、幼な子とはいえ成長すれば奴らの父、持氏の仇であるわしに反抗してくる。過去の歴史を見よ!平清盛は源頼朝や義経を生かしたばかりに平家は後に滅んでしまった。同じことが起こるかもしれん。」
かつて「平治の乱」で源氏に勝った平清盛さんは頼朝さんを流罪。まだ赤子だった義経さんは寺へ入れたんだ。しかし後にこの2人が挙兵して平家は滅亡したんだよ。
私「しかし、兄上。恐怖で抑えるばかりでは、反動がくるのでは…。亡き満済殿が残した言葉どおり私は心配です。」
義教「もうわしに反抗するものはおらん。心配致すな。」
私「されど…。」
義教「ようやく地盤が出来たのだ。わしの治世はこれからが本番だ。智子、そなたにはまだまだ活躍してもらわねばならんぞ。その前にしばらくはゆるりと休むがよい。身体は充分に労わるのだ。」
義教は数々の敵を破り、有頂天になっていましたが、私には優しい一面も見せてくれました。
以前より義教が赤松満祐殿を討つとの噂が流れていました。
義教と満祐殿は良好な関係で満祐殿は幕府内での長老格として権勢を誇っていました。
しかし、義教が守護大名の家督継承に干渉し出してからは関係が怪しくなり、満祐殿の弟・義雅殿の領地を没取してからは悪化の一途を辿っていきました。
さらに満祐殿は侍所の職を罷免させられてからは幕府にも出仕しなくなっていたのです。
私は満祐殿と亡くなった兄・義持が揉めたことを思い出しましたが…何もないと考え、義教の言葉に甘え、父・義満や義持のお墓がある相国寺に入りました。
しかし、私の考えは甘かったです…。
つづく…
次回をお楽しみに~