私、足利義満の娘・智子です。
私が関東に来て半年が経ちましたが、聞こえてくる兄・義教の噂は怖いものばかりでした。
日野義資殿や東坊城益長殿の所領没取は話しましたが、他には…
「酌が下手だという理由で侍女を殴り髪を切って尼にさせた」
「料理が不味いと料理人を処罰した。」
「献上された梅の木が折れたと庭師を処罰した。」
と些細なことで処罰していました。
私はこうなることを予想していました。
私が幼い頃、義教が犬を蹴る姿を見て怖いと感じていたのです。
このままでいけないと思い、京へ戻ることにしました。
戻る前に関東管領・上杉憲実殿に挨拶をしようと思い憲実殿の居館を訪れました。
しかし、金沢文庫に出掛けていると聞き、早速そちらに向かいました。
金沢文庫は完成間近でした。
私「憲実様、もうすぐ完成ですね。」
憲実「これは聖仙殿。ようやく1つの目標であった金沢文庫再興が達成します。」
そういう憲実殿は優しく、やり遂げた感のある顔でした。
憲実「ところで今日はどうされました?」
私「京へ戻ろうと思いまして御挨拶に参りました。」
憲実「そうですか…それは寂しいですね。もう1つ再興を目指している足利学校の完成も見てほしかったのですが…。」
私「ありがとうございます。また、こちらに来ることもございます。その折には寄らして頂きます。」
憲実「わかりました。道中お気をつけて。…智子様。」
私「!! ご存知だったのですか?」
憲実「はい。私にも間者がいますから。しかし持氏様はご存知ありませんので。持氏様は智子様は亡くなっていると思っていますから。」
憲実殿は私の正体を最初から知っていて私に接してくれていたのです。
憲実「関東管領として将軍家とは仲良くせねばと思い、以前より間者に調べさせていました。そこで智子様の存在を知ったのです。」
私「よほど腕のいい間者ですね。私のことを知るのはごく僅かの人しかいませんから。」
憲実「なんとか幕府との衝突は避けるよう努めますので。」
私「私も同じく努めます。兄・義教を抑えるように。またお会いできる日を楽しみにしておりますね。」
私は間者の小百合と共に鎌倉を後にし京へ向かいました。
憲実殿の苦労はこれからが本番を迎えることになるのです。
そして京の街は義教に怯えていました…。
つづく…
