私、足利尊氏の妻・登子です。
1355年、平定された京に戻った私を1人の僧が訪ねてきました。
私「あなたは…直冬!」
頭を丸め顔に傷を負っていましたが、私はひと目で直冬とわかりました。
直冬「わし…いや私は出家しました。」
私「直冬、茜があなたの元に来ませんでしたか?」
直冬「……東寺に陣を置いて尊氏様を攻めようとする前日の夜、来ました。叔母は…亡くなりました。」
私「! …やはり。聞かせておくれ、茜の最期を。」
直冬「叔母は私に戦を辞めさせるために忍んできました。」
茜「直冬!これ以上戦は辞めておくれ。京の街を焼いて皆苦しんでいます。」
直冬「将軍は!将軍は我が養父・直義様を殺した!そして…わしを殺そうとしている。将軍は苦しめばよいのだ。」
茜「…直義様は死んではおりません。直義様は世を捨て生きております。尊氏様がそうさせたのです。」
直冬「生きてる…しかしわしを殺そうとしているではないか⁈ 」
茜「尊氏様は良い世を作るためです。それに殺すのではなく、直冬には武士を捨ててほしいのです。」
直冬「ならば義詮を廃し、わしが将軍の後を継げばよい。」
茜「…直冬!あなたの母はあなたを武士にはしなくなかったのです。死の間際にそれを強く願っていたのです。」
直冬「辞めぬ!」
茜「…ならばあなたを斬るしかありません。」
茜は太刀を直冬に向け、ひと太刀振り下ろしました。
直冬の顔から血が流れます。
直冬「本当に斬れるのか…⁈ 」
茜「…斬ります。」
そう言った茜は自らの首を斬りました。
直冬「茜!何をするのだ⁉︎ 」
茜「……直冬、私の命に変えて戦を、武士を辞めておくれ。」
直冬「茜!死んではならぬ!」
茜「本当のあなたは優しい方…私の願いを聞いておくれ。お願いだから武士を辞めて。」
直冬「…茜。」
茜「…これを御台様に渡しておくれ。直冬……。」
直冬「叔母は最期に御台様宛の文を私に託し…亡くなりました。」
直冬は文と茜の太刀を私にくれました。
つづく…