私、足利尊氏の妻・登子です。
1352年3月13日、夫と私は延福寺に幽閉した直義殿の元を訪れます。
それまで夫は何度か直義殿に京へ帰るように話し合いましたが直義殿は首を縦には降りませんでした。
今回は夫は何かを決めたような感じです。
夫「直義、また来たぞ。京から茶菓子が入ったので持参した。一緒に食べようと思ってな」
直義「おぉ、菓子など久しぶりですな。」
夫「こうしていると昔を思い出すなぁ。北条を倒したことも幕府を作ったことも随分昔のことのようだ。」
直義「そうですね。いろいろありました…。」
私は今回に限って茶菓子などをなぜ持参したのか気になっていました。
直義「兄上…来世では戦うことない兄弟でいたいものです。」
直義殿が茶を飲もうとした瞬間、私は悟りました。そして私は直義殿が飲もうとした茶を直義殿の手から払いました。
茶は床にこぼれ落ちました。そして、
私「なぜです⁈ 兄弟で争わなければならないのですか?仲の良いお二人だったのに!殿!なぜ直義殿を…。」
私は涙が溢れました。
夫「登子…。」
直義「姉上…よいのです。わしは覚悟しておりました。わしを殺さねば幕府はまとまりません。」
私「なぜ⁈ 一緒に京に帰ればいいのではないですか⁈ 」
直義「今までわしに付き従ってきた者たちを見捨てることはできません。わしが死ぬしかないのです。」
すると夫は立ち上がり、太刀を抜きました。
それを見た直義殿は数珠を持ち手を合わせます。
私「殿!!」
私が止める間もなく、夫は太刀を振り下ろしました。
床に転がったのは、切れた数珠の珠だけです。
私「!」
直義「…兄上。」
夫「…今、わしは直義を切ったのだ。直義は死んだのだ!そなたはもはや直義ではない。」
私「殿、それは…。」
夫「直義ではないそなたは何処ぞに行くがよい。もはや世のことには関わらずにな。」
直義「兄上…!」
直義殿は泣きました。私も。
そして夫は1人の男をその場に呼びました。
直義「おまえは…⁈ 」
つづく…