私、足利尊氏の妻・登子です。
九州で軍勢を立て直した夫は京を目指して進軍しました。
後醍醐天皇様が派遣した新田義貞様の軍は播磨国の赤松円心様の抵抗に遭い足止め状態です。
この新田軍には楠木正成様はいませんでした。
私が間者の茜に調べさせたところ、楠木正成様は国許の河内国で謹慎させられていました。
足利軍を九州へ追いやった戦の後、正成様は後醍醐天皇様方が有利な内に足利と和睦すべきと進言、それが朝廷の不信を買い謹慎を命ぜられたようでした。
私は茜からの報を聞き、新田軍が苦戦している中、正成様が出陣してくると予想しました。
私は夫が正成様に尊敬の念を抱いていることを考え、密かにお会いできないものかと思いました。
予想どおり楠木軍は出陣してきました。私は茜を走らせ、進軍途中の正成様に夜陰に紛れ、お会いできることになりました。
私「お初にお目にかかります。足利尊氏の妻、登子です。」
正成「楠木正成です。まさか足利殿の御台殿が来られるとは驚きです。」
私「やはり足利との戦に向かうのですか?謹慎されていると聞きましたが…。」
正成「帝の命で出陣となりました。私は足利殿と和睦を望んでいたのですが、聞き入られませんでした。」
私「和睦とは?」
正成「先の戦で勝ったにも関わらず、足利殿に付いていく武士らを見たからです。時勢は足利殿に流れています。それを朝廷の方々は理解できないようです。」
聞いとけばよかったのにね。
夫が短期間で大軍を率いる状況を正成様は早くから読んでいたのでした。
私「夫は楠木様とは共に手を取り合いたいと思っております。」
正成「…お気持ちはありがたいのですが、私は最後まで帝の為に戦います。それを足利殿にお伝えください。」
私はそれ以上、何も言うことができませんでした。正成様の決意を感じたからです。
私は丹波国へ戻りました。私は正成様に兄・赤橋守時、護良親王様と通じるものを感じました。
夫率いる足利軍と新田、楠木軍は摂津国湊川で合戦となります…。
つづく…
