私、足利高氏の妻・登子です。
後醍醐天皇様が隠岐島脱出で幕府は新たな大軍を西国へ送ることにしました。
その中に足利氏も入っていたのです。
幕府より足利氏に出兵の命が下りました。
夫は病いを理由に断ろうとしましたが、それは許されませんでした。
夫は、
「前回の出兵も父、貞氏の喪中にも関わらず無理矢理行かせ、今回もまた無理矢理か!」
と怒っていました。
しかし、その夫の姿は病いとは見えませんでした。
この後、幕府より執権である私の兄・赤橋守時が足利氏にやってきました。
兄は幕府が無理矢理出兵させることを夫に謝りにきたのです。
兄「高氏殿が病いなのに、出兵させて誠に申し訳ない。」
夫「致し方ありません。執権殿も気になされますな。」
兄「…執権といっても大事は得宗家で決められて、執権はいつの間にかお飾りになってしまった。」
夫「…」
兄「それがしも西国へ出陣したいが、お飾りとはいえ幕府の長たる執権。鎌倉を守らねばなりません。」
夫「兄上様…。」
兄・守時は夫の心を読んでいたのかもしれません。
夫との対面の後、私は兄に呼ばれました。
兄「登子、この後、何が起きるかわからない世になった。わしはお前を守ってやることはできん。そこで…。」
ここで私に付いている侍女が表れました。
名を茜といいます。
兄「登子には黙っていたが茜はわしが送った間者だ。足利を見張らしていたのだ。」
私「なんと!茜が間者だとは。」
兄「茜、足利を見張ることはもうよい。この後はわしに代わって登子を守れ。命をかけて!」
私は声が出ませんでした。兄は既に死を覚悟していたのかもしれません。
夫は出陣の準備を進めました。
この頃、河内国の楠木軍との戦から仮病で帰国した武士の中に新田義貞様がいました。
なんと夫は帰国した新田義貞様と会いに行ったようでした。
つづく…。
