65番 あなたは無口で | トラスト

65番 あなたは無口で

65番目の詩。無口な青年を思いながら。

 

あなたは無口で

面接でも喋ることがないから

就職とは折り合いが悪く

静かな部屋で自分の世界を創造している。

 

世間の人たちは

そんなあなたが心配で

何かが異常であろうと思い込み、

今、僕はあなたと二人きり。

 

無口なあなたと無口な僕は

笑顔をかわし合うけれど、ただ沈黙が流れるだけ。

こともあろうに、

あなたはもう一人無口な奴と出会えた。

 

何か嫌なことがありますかと聞いたら、

嘘と金の無駄遣いが嫌だと言う、無口なあなたが。

僕が、そうですね、と言ったら、

あなたは微笑んだ。

 

また一人、嘘と金が嫌いな人間が

健常な人たちの支配に抵抗している。

社会は不倫と不正と癒着と快楽で騒がしい、

彼の世界は無口だけれど静かだ。