その日は季節外れの雪が降っていた。


「まさる!母さんが…母さんが…」


僕は父からの母が危篤状態という電話を受け、すぐさま遠く離れた岡山の実家へと向かう為、駅へとタクシーを走らせた。


電話越しの父の声からして母の容態はかなり悪いのであろう。
車内にいる間、なかなか進まない交通状況への苛立ちと不器用だが間違い無く精一杯育ててくれた母への想いに胸を募らせた。

やっとの思いで新幹線の駅に着いた瞬間僕の目の前は真っ白になった。



-新幹線各線、積雪の為、終日運行見合わせ-



無機質な電光掲示板の文字が僕の視界に刻まれていく…

そして、僕は駅長室へ駆け込み懇願した。

もう何を話したのか覚えていない。きっと一本でいいから運行を再開して欲しいという事と母への思いを繰り返していたと思う。

そして思いは通じた。



-21:20発 新幹線岡山行き最終運転再開-



駅長が掛け合ってくれたのか、積雪の具合が良くなったのかわからないが目の前で起きた奇跡に僕は泣き崩れた。
人間が好きになった。
神はいるんだと思った。
この場にいる全ての人に感謝したくなった。

立ち上がりたいけど涙が止まらない。
僕は待合室の端で時間を忘れ泣き続けた。






そして乗り遅れた。