アレッシーの時計 | 風見鶏

アレッシーの時計

引っ越しの荷物から取り出した

彼女からもらった時計は止まっていて、

その電池をどうしてもとりかえられなくて、

ずっと止まったまま机の上にあった。


時計が動き出すのがなんとなくこわくて、

あの時の風景や気持ちを
置き去りにしちゃうんじゃないかなって、

このまま止めてたら
戻ってくるんじゃないかなって、思って

どうしても、電池を入れられなかった。

指した針は11時36分。

赤い針はベルを鳴らす。

あの時ぼくはなにをしてて、
どんな気持ちで、いたんだろう。



前に進むために、時計に入れたボタン電池。

たったこれだけで、時間は動き出した。

案外簡単なもんなんだ。