坂上香『プリズン・サークル』 | What's Entertainment ?

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『プリズン・サークル』

監督・制作・編集:坂上香/撮影:南幸男、坂上香/録音:森英司/アニメーション監督:若見ありさ/音楽:松本祐一、鈴木治行

製作:out offrame/配給:東風

公開:2020年1月25日

 

凄いドキュメンタリーだった。

6年間にわたる取材申し込みでようやく許可が下り、2年に渡って日本の刑務所内部を初めて撮影した作品。

 

「島根あさひ社会復帰促進センター」という官民協働の新しい刑務所は、更生プログラムに組み込まれた「TC(Therapeutic Community=回復共同体)」という教育カリキュラムがとにかく斬新で、初犯者がメインの受刑者たちを精神的にどう更生させていくかに重きが置かれている。その内容が、本当に理にかなっていて刑務所のあるべき姿を思わせる。

ここから出所した元受刑者の再犯率は、他の刑務所に比べて格段に低いことから見てもその効果のほどが分かると言うものだ。

20代の受刑者4人に対するインタビューもしているのだが、彼らはそれぞれ幼少期にとても酷い環境で過ごしていた。幼い頃の一定期間、親からちゃんとした愛情を受けていない子供は著しく自己肯定感が乏しくそれが成長するにしたがって深刻な問題を引き起こすことは広く知られているが、彼らもその例外ではない。

その少年時代から犯罪に手を染めて逮捕される過程、あるいは逮捕されて以降の彼らの思考を見ているだけで胸が苦しくなってくる。

ただ、この新しい刑務所の収容人数はたったの40人に過ぎない。犯罪者をどう更生させるかというのはもはや深刻過ぎる課題だが、間違いなくこの刑務所には一つの光を感じた。

個人的に気になったのは、度々挿入されるアニメーションが過剰に情緒的なことだった。

 

必見のドキュメンタリーとして、強くお勧めしたい。