2022年The Birthdayは「月夜の残響ep.」をリリースし、それに伴い11月1日から全国12か所を周るツアーが始まった。

 

2022年11月6日【GO WEST.YOUNGMAN】TOURの仙台PIT公演の開催日である

アルバムのツアーではないため、新曲4曲と彼らの代表曲で構成されたセットリストでのライブだ。

コロナ禍という事もあり、大声での歓声は禁止されたライブだった。

会場前にすでに革ジャンを着たファンたちが集まっている。チバユウスケの好きな銘柄ラッキーストライクを吸い彼らのライブを待ち望んでいるようだ。

 

開始時刻になるとThe Crestsの「Sixteen candles」が流れ出す。ステージ脇でチバユウスケがこれを唄い4人で気合を入れている姿を想像するのはたやすかった。黒い服を纏った4人がステージに上がる。この日の衣装はRude Galleryとメンバーがこのツアーに向けて制作したものだった。

今回のライブ直前にチバユウスケはコロナを患ってしまっている。彼はステージの真ん中に立つと、深々と頭を下げた。観客はそんなことをもろともせずに会場に響くほどの拍手を鳴らす。

 

 

チバユウスケがマイクの前に立ち観客の歓声が止まり、彼に注目が集まるとアカペラで歌い出した。オープニングは新曲の「トランペット」だ。最新作である「月夜の残響ep.」からの1曲である。彼のしゃがれた声が、青空の下に響くトランペットのように響き渡る。洗礼された彼の歌声は、一曲目にして観客の心をわしづかみにした。徐々に観客たちのボルテージが上がると、続けて「COME TOGETHR」が始まる。メンバー4人と観客全員がこの日ひとつになり歩き出した瞬間だった。

 

彼らのライブはMCを入れず止まることがない。人気曲である「声」だ。演奏陣3人とチバユウスケの声が重なり、優しさと生きていく強さを訴えていた。コロナ禍という中で声を上げることが出来ないライブだからこそ、メッセージ性がさらに強まったと感じることができ、私も涙を抑えることが出来なかった。新曲「スカイブルー」は、フジイケンジのギターリフから始まる。ディレイを多用したこの曲には奥行きが生まれ、その上下をヒライハルキとクハラカズユキのリズムでさらに広げていくようだった。爽やかな一曲で、夏のようなカラッとした青空を彷彿とさせる。

 

中盤、チバユウスケがひと言「今日はありがとうな」と訪れたファンたちに感謝の言葉を伝えた。MCの少ないThe Birthdayのライブだが、チバユウスケの言葉には温かみがありコロナ禍で不安のある中、彼自身も復活したことを宣言したように思われた。それに応えるように声が出せない中ファンたちも大きな拍手を返した。

 

「LUST-チェリーの入ったリンゴ酒を見て想うこと-」の怪しげなスタートと、感情をむき出したフジイケンジのギターソロに観客の意識はステージに集まった。その流れででゆったりとした「抱きしめたい」を唄い始めると、先程まで踊っていた観客席は静かになりステージに注目していく。「オレは決めたんだあのクズ共から世界を奪い返すんだ」と強い意志を込めたメッセージを伝えると、涙を流すファンも見られた。

 

爆発寸前までに高まった集中力を破壊した曲は「24時」だ。ドラムとベースの唸るような絡み合いから始まり、語り調でメッセージ性の強いこの曲には、チバユウスケ自身がリズムに身を任せ体を揺らしていく。そんな動きが客席に伝染していくようにファンたちも好きなように踊り出していく。ダンスミュージックな1曲で会場はネオン輝くフロアへと一変された。

 

 

このライブでは初期曲である「あの娘のスーツケース」が演奏された。チバユウスケのギターリフから始まり4人の音が重なっていく。乾いたグレッチの音にファンたちは最大まで気分を高ぶらせていた。

 

「スラムダンク」の映画のOPに使われている「LOVE ROCKETS」はヒライハルキの力強いベースから始まる。会場は赤いライトに包まれ、その音の危険性を警告しているようだった。止まることなく披露された新曲「咆哮」では、チバユウスケのしゃがれたハスキーボイスが唸るように響き渡り、The Birthday特有のグルーヴが生み出す勢いや深みが重なり曲が終わっても残響が体の中にこだましていく。怪しげな音が重なる「ブラックバードカタルシス」で本編は終了した。

 

アンコールでは、ゆったりとし落ち着いたリフで始まる「ヘッドライト」から始まった。ステージ後ろで真っ白なライトが揺れると、まさにヘッドライトの群れの中で歌っているようだった。観客たちは虚空なモノクロの世界に引き込まれるが、チバユウスケが一滴の溶けたアイスキャンディを垂らすことで色が付けられていく。

 

 

2曲目は一転し、チバユウスケの「READY STEADY GO!」という掛け声で始まる。勢いの乗ったアンコールの定番曲をぶちかました。

拍手の中「ありがとう」とチバユウスケが一言告げてステージの袖に下がっていく。

 

観客のボルテージは下がることなく、アンコールの意味を込めた手拍子が会場を包み込んだ。それに応えるように、メンバー4人が出てくる。ダブルアンコールでは、衣装チェンジがされていて全員がTシャツ姿へと変わっていた。

客席から「チバさん、コロナ大丈夫だった?」と心配する声が上がったが、「車のことか?」と彼なりのジョークで返して見せた。

 

ダブルアンコールで見せたのはThe Birthdayの中でも特に人気のある1曲「涙がこぼれそう」だった。チバユウスケが1音ギターを鳴らすだけで、ファンはそれに応えるように我慢することが出来ずに歓声を上げる。「久しぶりにやるよ」と笑いながら言うと印象的なギターフレーズを鳴らした。寂しげな声とチバユウスケのギターのみで唄い始め、「今日はお前らと仙台PITだ!」その声を合図に、この日最大の興奮が仙台PITに広がった。クハラカズユキの4カウントから4人の音が爆発的に響き渡る。まるで夜からゆっくりと日が上がるようなこの曲でライブを締めくくった。「ありがとう、また会おうな」と言葉を残しステージから去っていく姿を見送った後も、会場の興奮は冷め止まなかった。

 

このライブに参加したファンたちは「少しだけ嬉しくなって、また立ち上がることだろう」。

【GO WEST.YOUNGMAN】TOURでは、彼ら4人の新しい音楽の形を全国に広げていき転がり続けていくのだろう。コロナ禍でもどんな苦難があろうとも、彼らの信じる答えは常に一つなのだろう。

 

セットリスト

 

1.トランペット
2.COME TOGETHER
3.アンチェイン
4.ある朝
5.BECAUSE
6.声
7.スカイブルー
8.LUST -チェリーの入ったリンゴ酒を見て想うこと-
9.抱きしめたい
10.24時
11.DIABLO 〜HASHIKA〜
12.あの娘のスーツケース
13.LOVE ROCKETS
14.咆哮
15.ギムレット
16.ブラックバードカタルシス

アンコール
1.ヘッドライト
2.READY STEADY GO

ダブルアンコール
1.涙がこぼれそう