【02】コロナ、北海道ブラックアウト、サイバーパンデミック——危機は偶然なのか?
前回の記事では、僕が長年気になっている「117」という数字と、2026年11月7日という日付について書いた。
数字が一致するからといって、何かが起きると断言できるわけではない。
ただ、世界で起きてきた出来事を調べると、気になることがある。
それは、大きな危機が発生したとき、社会の仕組みそのものが変化していくということだ。
感染症、停電、サイバー攻撃、金融システムの混乱。それぞれ別の問題に見えるが、現代社会では、ひとつの危機がほかの分野にも影響を及ぼす可能性がある。
さらに、危機が起きる前から、その状況を想定した演習やシミュレーションが行われている。
これは社会を守るための備えなのか。そして、危機の後には何が変わるのだろうか。
今回は、実際に起きた出来事と公開資料から考えてみたい。
■ コロナ流行前に行われたパンデミック演習
2019年10月18日、ジョンズ・ホプキンス大学健康安全保障センターは、世界経済フォーラム(WEF)、ビル&メリンダ・ゲイツ財団とともに「Event 201」という演習を実施した。
想定されたのは、新しい感染症が世界中に広がり、医療だけでなく経済や社会全体に影響を及ぼすシナリオだった。
企業活動、国際協力、情報の拡散など、感染症以外の問題も検討された。
その数か月後、現実の世界で新型コロナウイルス感染症が拡大していく。
「なぜ、世界的な感染症を想定した演習が、その直前に行われていたのか?」
この時系列は注目を集め、インターネット上ではさまざまな説が広がった。
ただし、主催者はEvent 201を架空のシナリオに基づく危機管理演習と説明している。演習が存在したという事実だけでは、感染症の発生が事前に計画されていたとは証明できない。
一方で、感染症が広がった場合、物流、金融、企業活動、情報通信などにどのような影響が出るのかが、事前に検討されていたことは確かだ。
危機そのものだけでなく、その後に社会全体がどう変わるのか。この視点は重要なのではないだろうか。
■ 北海道ブラックアウトが示したもの
2018年9月6日、北海道胆振東部地震が発生した。
地震の影響に加え、北海道では大規模停電が発生。約295万戸に影響が及び、北海道全域が停電する「ブラックアウト」という事態になった。
電気が止まると、照明だけでなく、通信、交通、店舗の営業、商品の配送など、さまざまな機能に影響が広がる。
スマートフォンの充電ができない。店舗が営業できない。交通機関が止まり、空港にも影響が出る。
普段は当たり前に利用しているサービスが、一気に使えなくなる可能性があるのだ。
ブラックアウトは、複数の発電所の停止や送電網の問題など、いくつもの要因が重なって起きた。意図的に引き起こされたとする確かな根拠はない。
それでも、この出来事から学べることは大きい。
社会を支えるシステムは、普段は意識されない。しかし、その一部が止まるだけで、日常生活は大きく変わる。
では、電力ではなく、金融や通信の分野で同じような連鎖が起きたらどうなるのだろうか。
■ 次に想定される危機、サイバーパンデミック
世界各国で、重要インフラへのサイバー攻撃が問題になっている。
企業のシステムが攻撃され、業務が停止する。病院のシステムに障害が発生する。物流や決済サービスが使えなくなる。
サイバー攻撃による被害が連鎖的に広がる状況は、比喩的に「サイバーパンデミック」と呼ばれることもある。
たとえば、ある企業の受発注システムが停止すれば、商品の出荷が遅れ、取引先にも影響が及ぶ。決済や配送に問題が広がれば、さらに別の企業や消費者にも波及しかねない。
現代社会は、銀行、通信、物流、医療など、多くの分野でデジタル技術に依存している。
便利になる一方で、重要なシステムが停止したときの影響も大きくなり得る。
もちろん、世界規模の攻撃が計画されていると決めつけることはできない。
しかし、社会のデジタル化が進むほど、システムを安全に維持することは重要になる。
もし金融や通信などの重要インフラに大規模な障害が起きたら、社会はどのように復旧し、どんな制度や技術を導入するのだろうか。
その問いは、これからの社会を考えるうえで無視できない。
■ 危機の後に変わる社会のルール
大きな危機は、人々の生活だけでなく、社会のルールを変えるきっかけにもなる。
新型コロナウイルス感染症の流行では、各国で移動や営業に関する制限が設けられ、働き方や生活習慣も変化した。オンライン手続きやデジタルサービスの利用も広がった。
非常時には迅速な対応が求められる。それまで難しかった制度の変更が、危機をきっかけに進むこともある。
安全を守る対策は重要だ。一方で、その対策によって個人の自由やプライバシーがどう変化するのか、誰が制度を監督するのかも考える必要がある。
インターネット上では、危機が利用され、社会の管理が強まるのではないかという説も語られている。
ただし、危機の後に制度が変わったという事実だけでは、危機そのものが意図的に引き起こされたとはいえない。
だからこそ、具体的な政策や公開資料を確認し、何が変わり、誰にどのような影響があるのかを追うことが重要になる。
問題は、変化が起きること自体ではない。その理由や影響を、僕たちがどこまで理解できているかではないだろうか。
■ 2010年の報告書に描かれた未来
2010年、ロックフェラー財団とGlobal Business Networkは、『Scenarios for the Future of Technology and International Development』という報告書を公表した。
この報告書では、技術や国際社会の未来について複数のシナリオが検討されている。
そのひとつ「Lock Step」では、深刻な感染症の流行をきっかけに政府の管理が強まり、社会が変化する未来が描かれている。
新型コロナウイルス感染症の流行後、この内容が現実と重なるとして注目を集めた。
ただし、この報告書は未来を予言する文書ではなく、将来起こり得る状況を想定するためのシナリオ分析だ。危機を想定することと、その危機を引き起こす計画があることは同じではない。
それでも、危機そのものだけでなく、制度や人々の行動がどう変化するかまで検討されていた点は興味深い。
実際に起きた出来事だけでなく、その前にどのような未来が想定されていたのか。公開資料を自分で確認することには意味があると思う。
■ そして、金融システムに何かが起きたら?
ここまで、感染症、ブラックアウト、サイバー攻撃、危機後の制度変更について考えてきた。
共通しているのは、現代社会が複雑なシステムの上に成り立っているということだ。
では、金融システムが大きく揺らいだ場合はどうだろうか。
銀行預金、現金、電子決済、企業間の送金。僕たちは普段、お金の仕組みそのものについて深く考える機会は少ない。
しかし、大規模な金融危機や決済システムの障害が起きたら、社会はどのように対応するのだろうか。
金融システムを守るため、制度や技術が見直される可能性はある。
そして今、世界では「CBDC」と呼ばれる新しい形のお金について議論が進められている。
CBDCとは、中央銀行が発行するデジタル形式の通貨のことだ。各国で研究や実証実験などが行われているが、導入状況や制度設計は国によって異なる。
現時点で、金融崩壊の後にCBDCへの移行が決定しているわけではない。
それでも、もし将来、大きな危機によって金融システムの再編が進むとしたら、デジタル通貨はどのような役割を持つのだろうか。
支払いが便利になる一方で、現金の使われ方や個人のプライバシーには、どのような変化が起こり得るのか。
僕が気になっているのは、まさにその部分だ。
2026年11月7日に何かが起きると断言できる根拠はない。「117」という数字が特定の出来事を予告していると証明できるわけでもない。
ただ、過去の出来事や公開資料を調べ、これからの社会について考えることはできる。
危機を予言することよりも、危機が起きたときに何が変わり得るのかを知っておくことに意味があるのかもしれない。
次回は、CBDCとは何なのか、世界ではどのような議論が進んでいるのか、そしてデジタル通貨が広がる未来にどのような課題があるのかを掘り下げてみたい。
危機の先にあるものは、元の世界への復帰なのか。それとも、お金の仕組みを含めた社会全体の再編なのか。
その問いについて、次回はもう少し深く考えてみたい。
※本記事は公開資料や過去の出来事をもとにした考察です。特定の日付に災害やサイバー攻撃が発生すること、過去の危機が意図的に計画されていたこと、金融崩壊後にCBDCへの移行が決定していることを示すものではありません。
【参考資料】
・ジョンズ・ホプキンス大学健康安全保障センター「Event 201」
https://centerforhealthsecurity.org/our-work/tabletop-exercises/event-201-pandemic-tabletop-exercise
・資源エネルギー庁「北海道ブラックアウトについて」
https://www.enecho.meti.go.jp/about/special/johoteikyo/blackout.html
・Rockefeller Foundation / Global Business Network(2010)
『Scenarios for the Future of Technology and International Development』
https://swprs.org/wp-content/uploads/2020/04/rockefeller-foundation-scenarios-2010.pdf