「あんたのせいだ」
と言った人は、あたしの目を見て言ったけど、
誰に言ったんだろう?
あの人はあたしに言ったけど、
あたしに言ったんじゃない。
あたしはあの人がそういうのを聞いたけど、
あの人が言ったんじゃない。
ただ、
「アンタノセイダ」
という音が、空間に現れて消えてった。。
あの人とあたしは同じ空間の中の、一枚のフィルムの中で同じ
「アンタノセイダ」
という音の現れを感じた。
正確には、それしかなかった。
それを、
あの人が言って、あたしが聞いた、と解釈し、
「ごめんなさい」
というやりとりが、
無意識に、無為に起こり、次の縁となって、繋がっていく。
あたしは、
空間であったし、
「ごめんなさい」
というあたしで在ったし、
それを眺めてる、意識でした。
誰かに何かを咎められる時、
それは、あなたに言っているのではありません。
誰かの求める、理想のあなたになることもありません。
ただ、その言葉を聞いた。
聞くあなたはいないし、
言う誰かもいません。
ただ、空間に、その言葉が現れて消えていきます。
いのちが今日も、優しいです。